その時でした。
――ピンポーン。
突然、インターホンが鳴ったんです。
「えっ……?」
こんな朝早くに?
涙をぬぐいながらモニターを見ると、宅配便でした。
そういえば昨日、不在通知が入っていたことを思い出します。
慌てて玄関を開けました。
「おはようございます」
配達員さんは笑顔で荷物を差し出します。
「こちら、お届け物です」
サインをして受け取った箱を見て、わたしは少し固まりました。
差出人は、父でした。
「……お父さん」
部屋へ戻って箱を開けると、中には地元の野菜や果物、それからわたしの好きなお菓子が入っています。
一番上には、一枚のメモ。
『暑いからちゃんと食べなさい
また帰っておいで』
たったそれだけの言葉。
なのに、その優しさが胸へ刺さりました。
昨日、父から届いたLINE。
『元気?暑いからちゃんとご飯食べて』
その時は検査薬のことで頭がいっぱいで、ゆっくり返事もできませんでした。
父は何も知らない。
昨日、わたしがどんな一日を過ごしたのか。
どれだけ泣いたのか。
それでも、こうして変わらず心配してくれている。
「……ありがとう」
箱を抱きしめた瞬間、涙が止まらなくなりました。悲しい。
悔しい。
でも、それだけじゃありません。
こんなに応援してくれる人がいる。
一緒に泣いてくれる佐藤さんがいる。
離れていても気に掛けてくれる父がいる。
そのことが、どうしようもなくありがたく感じたんです。
震える手でスマホを開きます。
佐藤さんからは、昨日の夜と朝早くにメッセージが届いていました。
『無事家に帰り着いたかな?』
『おはよう。ちゃんと眠れた?』
画面を見つめながら、わたしは何度も深呼吸をしました。
昨日とは違う涙を流しながら、ゆっくりと文字を打ち始めます。
『生理、来ちゃった』
送信ボタンを押したあと、スマホをそっと胸へ抱きしめました。
これで、本当に今回の妊活は終わった。
そう思うと苦しかった。
それでも、時間は止まってくれません。
また新しい一日が始まっていくんだ。
窓の外では、昨日と同じように夏の太陽がまぶしく輝いていました。
その光が、今日は少しだけまぶしすぎるように感じたのでした。
次回へ続きます。
⬆︎とっても使いやすいキャップです🧢