「せーの――」

佐藤さんの声に合わせて、わたしたちはゆっくりと判定窓へ目を向けました。

その瞬間、息をすることさえ忘れてしまいました。心臓の音だけが、自分の耳の中で大きく響いています。

判定窓を見つめるほんの数秒。

でも、その数秒が何分にも何時間にも感じられました。


お願い。

どうか。

どうか。

心の中で何度も願います。

視線は判定窓から離せません。

まず最初に見えたのは、終了線。

「あ……」

小さく声が漏れました。

ちゃんと検査はできている。


あとは、もう一本。もう一本だけ。

その一本が現れてくれたら。

胸が苦しくなるほど願いながら、わたしは判定窓を見つめ続けました。


十秒。

二十秒。

三十秒。

時間だけが静かに流れていきます。

でも待っても待っても、もう一本の線は現れませんでした。

判定窓には、一本だけ終了線だけが、はっきりとそこにありました。


それもそのはずです。

判定修了までの時間、三分はもう過ぎているのですから。

陽性の線がでるならもっと前に出ているのです。


その瞬間、頭の中がぼんやりとしました。

「あ……」

それ以上、言葉が出ません。

分かっていました。

一本線。

陰性。

何度もネットで見たことのある結果です。


なのに、見間違いじゃないかと思って、もう一度説明書を手に取ります。

『判定窓に終了線のみが現れた場合は陰性です』

文字はちゃんと読めているのに、意味だけが頭へ入ってきません。


「そんな……」

小さくつぶやいた声は、自分でも驚くくらい震えていました。

もしかしたら今度こそ。

そんな期待を、どこかで抱いていました。



次回へ続きます。