部屋の中に、静かな時間が流れていました。
さっきまでの慌ただしさが嘘みたいです。
警察の訪問という思いもよらない出来事。
あまりにも突然で、妊娠検査薬のことさえ頭から離れてしまっていました。
でも、その出来事が落ち着いた今。
テーブルの上には、あの検査薬が静かに置かれています。
数十分前から、ずっとそこにあるのに。
今は、その存在がとても大きく感じました。
わたしは無意識に唾を飲み込みます。
佐藤さんも同じように検査薬へ目を向けていました。
「……見る?」
静かな部屋に、佐藤さんの優しい声が響きます。
わたしは返事をしようとしました。
でも、声が出ません。
小さく頷くことしかできませんでした。
ここまで来たら、もう逃げられない。
ずっと知りたかった答え。
でも、今は知るのが怖い。
そんな矛盾した気持ちで胸がいっぱいになります。
「緊張するね」
佐藤さんが苦笑いしながら言いました。
「うん……」
「さっきまで警察で頭いっぱいだったのにね」
「本当に」
二人で少しだけ笑います。
ほんの数秒前まで張りつめていた空気が、少しだけ柔らかくなりました。
でも、その笑顔も長くは続きません。
視線はまた自然と検査薬へ戻ってしまいます。
「見ようか」
佐藤さんがそう言って、ゆっくりと検査薬へ手を伸ばしました。
わたしも同じように手を伸ばします。
あと少し。
あと数センチ。
それだけなのに、手が震えて思うように動きません。
次回へ続きます。