ガチャ。
ドアが開く音。
わたしは何となく耳を澄ませます。
すると、聞き慣れない男性の声が聞こえてきました。
「こんにちは、警察です」
……何?
えっ?
警察…
どういうこと?
「はい…」
戸惑った佐藤さんの声が聞こえます。
続いて、もう一人の低い声が聞こえました。
「お母さまから息子さんと連絡が取れないとのご相談がありまして、念のため様子を確認に伺いました」
お母さん?
相談?
連絡が取れない?
何の話?
「母から…そうですか」
佐藤さんの声は動揺しています。
「恐れ入りますが、ご本人確認のため身分証をお願いできますか」
身分証……?
その言葉を聞いた瞬間、胸がドクンと大きく鳴ります。
何が起きているの?
事件?
事故?
頭の中へ次々と疑問が浮かびます。
「ちょっと待ってください、取ってきます」
佐藤さんがリビングへ戻る足音が聞こえます。
再度トイレの前を通る足音がしました。
「免許証です」
「はい、佐藤貴将さんですね、ありがとうございます」
身分証の確認が無事終わったようですが、警察が家に来るなんてあまり無い事態にわたしの心臓はバクバクです。
その時です。
玄関の外から、小さく無線のような音が聞こえてきました。
ここに来ている警察と警察署?の警察が何やら話している機械越しのような声。
外はどうなっているんだろう。
佐藤さんは大丈夫なんだろうか。
やがて警察の声が聞こえます。
「今、お母さまに電話して頂いてもいいですか?」
「…分かりました」
数秒後。
「うん、俺」
佐藤さんはお母さんに電話が繋がったようです。「うん、ごめん」
「うん、大丈夫だから」
「うん、心配かけたね、ごめん」
玄関から聞こえてくる会話だけでは詳しいことは分かりません。
でも、お母さんと話していることだけは伝わってきました。
わたしはトイレのドアを見つめたまま、ただ混乱することしかできません。
数分前まで頭の中は妊娠検査薬のことでいっぱいだったのに。
今は、それどころじゃない。
外起きていることは大丈夫なんだろうか。
もし妊娠していたら、佐藤さんはお父さんにしても大丈夫な人間なんだろうか。
わたしは息をひそめながら、玄関の方から聞こえてくる声に耳を澄ませていました。
次回へ続きます。