わたしは小さく頷いて、深呼吸をしました。

そして、ゆっくりと検査薬の箱へ手を伸ばします。


箱を持ち上げた瞬間、不思議なくらい手が震えていることに気付きました。

「すっごく緊張する……」

思わず小さくつぶやくと、佐藤さんが優しく笑います。

「俺も緊張してる」

「えっ?」

「実はさっきから心臓すごいよ」

そう言いながら胸に手を当てる佐藤さん。

その姿が少し可愛くて、思わず笑ってしまいました。


「佐藤さんでも緊張するんだ」

「もちろん」

「なんか、ちょっと安心した」

そう言うと、佐藤さんも笑います。


「一人だけじゃなくて良かった?」

「うん」

少しだけ空気が和らぎました。


箱を開けると、中には説明書と検査薬が入っています。

何度も見たことがあるはずなのに、今日は初めて見るもののように感じました。

説明書を手に取ると、文字が全然頭に入ってきません。


「えっと……」

読み始めても、同じ行を何度も目で追ってしまいます。

「落ち着け、わたし」

心の中で何度も言い聞かせました。


すると佐藤さんが隣から説明書をのぞき込みます。「俺が読む?」

「お願い……」

情けなく笑うと、佐藤さんは

「任せて」

と頷いて説明を読み始めました。


「検査するのはこのタイミングで……判定は数分待つんだね」

「うん」

返事をしながらも、頭の中は真っ白です。

その時でした。



次回へ続きます。