玄関のドアが閉まる音が、いつもより大きく聞こえました。
「ただいま」
佐藤さんがそう言いながら靴を脱ぎます。
「おじゃまします」
わたしも後に続きました。
何度か来ている佐藤さんのお家なのに、この日だけは空気が違って感じます。
リビングへ入っても、いつものようにソファへ座ることができませんでした。
バッグを持ったまま立ち尽くしていると、佐藤さんが少し笑います。
「そんなに緊張してる?」
「……うん」
正直に頷くと、自分でも笑ってしまいました。
ここ数日、ずっと待ち続けてきた日。
早く知りたいと思っていたはずなのに、いざその時が来ると、怖くてたまりません。
佐藤さんはそんなわたしを急かすことなく、冷蔵庫からお茶を取り出しました。
「とりあえず座ろう」
「うん」
二人でソファへ座ります。
テレビはつけませんでした。
静かな部屋には、時計の秒針だけが小さく響いています。
その音を聞いているだけで、心臓まで同じリズムで速くなっていくようでした。
佐藤さんがテーブルにコップを置きます。
「飲む?」
「ありがとう」
一口だけ飲んでみるものの、緊張で味なんてほとんど分かりません。
すると佐藤さんが立ち上がりました。
「ちょっと待ってて」
そう言って寝室へ入っていきます。
その背中を見送った瞬間、胸がドクンと鳴りました。
次回へ続きます。