佐藤さんは急かさず、静かに待ってくれます。
「その未来が、本当に来るのかなって思ったら、ちょっと怖くなっちゃって」
そう言った瞬間、胸の奥にしまっていた気持ちがあふれそうになりました。
年齢のこと。
妊活のこと。
結果を待っている今だからこそ、未来を想像するのが怖い。
期待すればするほど、もし違った時に苦しくなる。そんな気持ちを、ずっと心の中へ閉じ込めていました。
すると佐藤さんは、少し笑いながら言いました。「俺はね」
「うん?」
「今日、姉ちゃんがああ言ってくれて嬉しかったよ」
「え?」
「だって、姉ちゃんが自然に、ななさんを家族みたいに迎えてくれたってことでしょ」
その言葉に、ハッとしました。
わたしは子どものことばかり考えていました。
でも佐藤さんは、違うところを見ていたんです。「俺、大事な人を家族に紹介できて、本当に良かったって思ってる」
そう言って照れくさそうに笑う佐藤さん。
その笑顔を見た瞬間、胸の奥の張りつめていたものが少しだけほどけました。
焦る気持ちは、きっとすぐにはなくならない。
不安も消えない。
それでも、一人じゃない。
隣には、同じ未来を見ようとしてくれている人がいる。
そのことが、何より心強かったんです。
駅のホームに電車が入ってきました。
並んで乗り込むと、窓ガラスには寄り添って座るわたしたちの姿が映っています。
その姿を見ながら、わたしは心の中でそっと願いました。
いつか本当に、お姉さんが言ってくれたような未来が訪れますように。
そう信じて、今は一歩ずつ前へ進んでいこう。
そんなふうに思えた帰り道でした。
次回へ続きます。