お姉さんのお家を出る頃には、外はすっかり夕暮れになっていました。

「今日は来てくれてありがとうね」

玄関先まで見送ってくださったお姉さんが、何度も手を振ってくれます。


海斗君と唯ちゃんも

「また来てねー!」

と元気いっぱい。

「また遊ぼうね」

わたしも手を振り返しながら、なんだか帰るのが名残惜しくなっていました。

「今日は本当にありがとうございました」

もう一度頭を下げると、お姉さんは笑顔で言います。

「今度はもっとゆっくり来てね」

「はい、ぜひ」

そう返事をして、佐藤さんと二人で駅へ向かって歩き始めました。


しばらくは、お互い何も話しませんでした。

さっきまでの賑やかな笑い声が、まだ耳に残っています。

子どもたちの無邪気な笑顔。

お義兄さんの優しい雰囲気。

お姉さんの明るい笑い声。

本当に温かい家族だったな。


そんなことを考えながら歩いていると、不意に佐藤さんが口を開きました。

「疲れた?」

「ううん」

そう答えたものの、自分でも少し元気がない声だった気がします。

佐藤さんは少しだけ歩く速度を緩めました。

「……姉ちゃんの言葉、気になった?」

思わず足が止まりそうになりました。

「え?」

「きっと素敵なお父さんとお母さんになるって言ってたでしょ」


やっぱり気付いていたんだ。

わたしは平気なふりをしていたつもりでした。

笑顔で返事もした。

何事もなかったようにお茶も飲んだ。


でも、隣でずっと見ていた佐藤さんには、隠せなかったみたいです。

「ごめんね」

小さくそう言うと、佐藤さんは首を横に振りました。

「なんで謝るの?」

「だって……」

言葉が続きません。

「嬉しかったの」やっとそれだけ言えました。

「すごく嬉しかった、でも、その分……」

その先は声になりませんでした。



次回へ続きます。