海斗、こっち向いてー!」

「唯、にっこり!」

義兄さんが子どもたちに声を掛けます。

「じゃあ撮るよー!」

お義兄さんがセルフタイマーをセットして、慌てて戻ってきました。


「はい、チーズ!」

カシャッ。

シャッターの音が鳴ります。

写真を撮る時に今どき「はい、チーズ!」なんて古臭い言葉も逆に何だか癒されていいなぁ、なんて失礼なことを思ってしまいました。


撮れた写真をみんなでのぞき込むと、お姉さんが嬉しそうに笑いました。

「わぁ、いい写真!」

海斗君も唯ちゃんも、とびきりの笑顔。

佐藤さんも、とても自然に笑っています。

そして、その隣には、わたし。


その写真を見ながら、お姉さんが何気なく言ったんです。

「なんかみんな雰囲気似てない?この構図がしっくり来るって言うか、綺麗にまとまってる感じ」

その言葉に、その場のみんなが笑いました。

「確かに」

お義兄さんも笑って頷きます。

佐藤さんは少し照れくさそうに笑っていました。

わたしも笑顔を作りました。


でも――。

胸の奥が、少しだけ締めつけられます。

この構図がしっくり来る。

その言葉は、とても嬉しかった。

嬉しくて、泣きそうになるくらい。


でも同時に

「まだ、わたしは家族じゃないんだ」

そんな現実も、胸に押し寄せてきました。


写真の中では、こんなにも自然に並んでいるのに。笑顔で写っているのに。

戸籍の上では、まだ他人。

佐藤さんとわたしは、恋人同士です。


それだけでも十分幸せなはずなのに、人って欲張りですね。

一度幸せを知ると、その先を願ってしまう。


いつか本当に、この写真みたいに家族になれたら。いつか

「家族みたい」

じゃなくて

「家族だね」

と笑い合える日が来たら。

そして、その輪の中に、小さな命も一緒に笑っていてくれたら――。


そんな未来を想像した瞬間、胸の奥が熱くなりました。

わたしは誰にも気付かれないように、そっと深呼吸をします。

今はまだ、その未来へ向かう途中。

だから焦らなくていい。

そう自分に言い聞かせながら、もう一度みんなの笑顔が映る写真を見つめたのでした。


次回へ続きます。