フライング検査をしたい気持ちを何とか抑えながら過ごしていた頃。
以前から約束していた日が、いよいよやってきました。
今日は、佐藤さんのお姉さん家族のお家へお邪魔する日です。
「姉ちゃんも子どもたちも楽しみにしてるからね」そう言われていたこともあって、数日前からずっと落ち着きませんでした。
服は何を着て行こう。
手土産はこれで大丈夫かな。
失礼なことを言ってしまわないかな。
考え始めると、不安ばかりが浮かんできます。
お姉さんのお家へ向かう電車の中でも、そわそわ。何度もバッグの中を確認してしまいます。
そんなわたしを見て、佐藤さんが笑いました。
「ななさん、今日ずっと緊張してるね」
「だって⋯今日は佐藤さんのお姉さんのお家だよ?」
そう言うと
「そんなに構えなくて大丈夫」
佐藤さんは優しく笑います。
「姉ちゃん、本当に気さくな人だから」
「それでも緊張するよ」
わたしが苦笑いすると
「じゃあ、もし緊張したら俺の顔見て」
その言葉に思わず笑ってしまいました。
「それで落ち着く?」
「たぶん」
そう言って笑う佐藤さんにつられて、わたしも少しだけ肩の力が抜けます。
電車を降りて、お姉さんのお家へ向かう道。
歩きながら、わたしはふと隣の佐藤さんを見ました。
そういえば…最近はたまに「貴将さん」と呼ぶようになったんだ。
今日は佐藤さんのお姉さん家族が居るのだから、当然、佐藤さんではなく、貴将さんって呼ぶんだな。
そう思うとなんだか急に恥ずかしくなってきました。
「どうしたの?」
佐藤さんが不思議そうに聞いてきます。
「ううん、ちょっと考え事」
本当は
「今日はちゃんと貴将さんって呼べるかな」
なんて考えていたなんて、とても言えませんでした。
次回へ続く。