食事会がお開きになり、お店を出る頃には、少し夜風が心地よく感じる時間になっていました。


「今日は楽しかったねー」

山本さんが笑顔で言うと

「またみんなで集まりましょう」

ご主人もそう言ってくださいました。

「ぜひ!」

わたしも笑顔で答えます。

榎木さんも

「今日はありがとうございました」

と笑顔で挨拶をして帰っていきました。

最後まで、わたしに気付く様子はありません。

ホッとしたような、不思議なような…。

なんとも言えない気持ちのまま、お店をあとにしました。


駅までの道を、佐藤さんと二人でゆっくり歩きます。

さっきまでみんなで賑やかに話していたのが嘘みたいに、夜の街は静かでした。


駅に着いて電車へ乗ると、佐藤さんがわたしの方を見て笑いました。

「今日は緊張した?」

「うん、思った以上に」

「やっぱり?」

「だって、佐藤さんの職場の人たちだし」

そう言うと

「みんな、ななさんのこと、いい人だねって思ってたと思うよ」

その言葉が嬉しくて、自然と笑顔になりました。


座席に並んで座り、窓の外を流れる夜景をぼんやり眺めます。

疲れているはずなのに、不思議と嫌な疲れではありませんでした。

「今日は本当にありがとう」

わたしがそう言うと

「こちらこそ、来てくれてありがとう」

佐藤さんはそう言って、優しく微笑みます。

その笑顔を見ているだけで安心できる。

そんな存在になっていました。


そのまま佐藤さんの家へ向かいます。

実はこの日は、食事会だけではなく、もう一つ大切な予定がありました。



次回へ続きます。