お店を出て、駐車場へ向かって歩いていました。
夜風が気持ちいいはずなのに、さっきまで楽しかった気持ちはどこかへ消えてしまっていました。
美咲さんの言葉が、何度も頭の中で繰り返されます。
「ななさん、切り替え早ーい!」
考えすぎかな。
そう思おうとしても、胸の奥がザワザワして落ち着きません。
その時でした。
「さっきの人、お友達?」
佐藤さんが静かに聞いてきました。
「うん」
そう答えながらも、少しだけ言葉に詰まります。「前の彼のことで相談に乗ってもらったりしてた友達」
「そうなんだ」
佐藤さんはそれ以上何も聞かず、少しだけ間を空けて言いました。
「でもさ」
「ん?」
「さっきの一言は、俺もちょっと気になったかな」思わず足が止まりました。
「え⋯?」
「悪気があったかどうかは分からないよ
でも、初対面の人の前で言うことではないかなって」
まさか佐藤さんも同じように感じていたなんて思っていませんでした。
わたしだけが気にしすぎているんだと思っていたからです。
「やっぱり?」
思わず聞き返すと、佐藤さんは小さく頷きました。「ななさんが傷ついてきたことを知ってる友達なら、なおさらね」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に溜まっていたものが少しだけほどけた気がしました。
気にしすぎじゃなかったんだ。
わたしが感じた違和感は、間違いじゃなかったんだ。
そう思えたんです。
でも同時に、少し寂しくもなりました。
信じていた人だからこそ、あの一言がこんなにも心に残ってしまったのかもしれません。
女同士って難しい。
味方だと思っていた人が、何気ない一言で傷つけてしまうこともある。
だからといって、美咲さんを嫌いになりたいわけじゃない。
ただ⋯これまでと同じ距離感では、もう付き合えないのかもしれない。
同士だと思っていたのはわたしだけだったのかもしれない。
そんなことを考えながら、わたしは佐藤さんの隣を静かに歩いていました。
次回へ続きます。