夜景を眺めながら、わたしたちはゆっくり歩いていました。


波の音だけが静かに聞こえます。

不思議なくらい落ち着く時間でした。


しばらく黙って歩いていると、佐藤さんがふと立ち止まります。

「ななさん」

「ん?」

振り返ると、佐藤さんは少し照れたような顔をしていました。


「一つだけ聞いてもいい?」

「うん」

「昨日、あんなことがあって⋯今日ここへ来るの、正直しんどくなかった?」

その質問に、わたしは少し考えました。


「少しだけ、不安だった」

素直にそう答えます。

「でも」

わたしは佐藤さんの顔を見ました。

「来てよかったよ、ここへ来る途中も、夜景を見てる今も、ずっと楽しい」


その言葉を聞いて、佐藤さんはホッとしたように笑いました。

「よかった、実はさ、昨日の電話のあと、今日ここへ来るのやめようかって少し迷ったんだ」

「え?」

思わず聞き返します。



その言葉に、胸が熱くなりました。


この人は、自分が会いたいよりも、わたしの気持ちを優先して考えてくれていたんだ。



次回へ続きます。