翌朝。

目が覚めると、昨日まで胸の中を占めていた重たい気持ちが、少しだけ軽くなっていました。

もちろん、不安が全部なくなったわけではありません。


でも「一人じゃない」そう思えるだけで、人ってこんなにも違うんだなと思ったんです。

仕事へ向かう準備をしながら、ふとスマホを見ると、佐藤さんからLINEが届いていました。


『おはよう😊今日は約束してた場所に行こうね』そのメッセージを見た瞬間、自然と笑顔になりました。


そうだ。

今日は佐藤さんが「連れて行きたい場所がある」と言っていた日。

『おはよう😊楽しみにしてるね』

そう返信すると

『よかった!絶対、ななさん気に入ると思う』

すぐに返事が返ってきました。

どこへ行くのか聞いても

『着いてからのお楽しみ』

そう言うだけで、教えてくれません。


仕事中も、その日はそのことばかり考えていました。

昨日までは裕太のことばかり頭に浮かんでいたのに。

今日は

「どこへ連れて行ってくれるんだろう」

そんなことを考えている自分がいました。


仕事が終わり、身支度を整えて外へ出ると、佐藤さんが車で待っていてくれました。

助手席のドアが開きます。

「お疲れさま」

「お疲れさま」

車に乗り込むと、佐藤さんはわたしの顔を見て安心したように笑いました。

「顔色いいね」

その一言だけで、昨日電話で心配してくれていたことが伝わってきます。


「昨日はありがとう」

そう言うと

「お礼なんていいよ、元気そうでよかった」

それだけ言って、車を走らせました。


しばらく走っていると、見覚えのある景色が目に入ってきます。

「あれ?この道って⋯」

どこへ向かっているのか、なんとなく分かってしまいました。


佐藤さんは、いたずらが成功した子どもみたいに笑います。

「気付いた?」

「うん」

わたしも思わず笑ってしまいました。


車は、そのまま海の見える道をゆっくり走っていったんです。



次回へ続きます。