佐藤さんから通知が届きました。
『ななさん、今電話しても大丈夫?😊』
その文字を見た瞬間、胸が苦しくなりました。
わたしは裕太とやり取りをしていたんです。
そのことを、佐藤さんは何も知りません。
知らないまま、いつも通り優しいLINEを送ってくれている。
わたしはスマホを見つめたまま、しばらく動くことができませんでした。
電話に出たい。
佐藤さんの声が聞きたい。
でも、このまま何事もなかったように話していいんだろうか。
そんなことを考えていると、また通知が届きます。『寝ちゃったかな?』
その一文を見た瞬間、胸がギュッと締め付けられました。
佐藤さんは、わたしが返事をしない理由なんて疑ってもいません。
ただ、眠ってしまったのかなと思っているだけ。
その優しさが、今のわたしには苦しかったんです。
わたしは小さく深呼吸をして、意を決して通話ボタンを押しました。
「もしもし」聞き慣れた優しい声。
「お疲れさま」その一言だけで、涙が出そうになります。
「今何してたの?」佐藤さんは、いつもと何も変わらない口調でした。
「のんびりタイムしてたよ」
そう答えると佐藤さんは
「一緒にのんびりタイムしたいなぁ」
と柔らかく笑いました。
仕事であったこと。
会社の人との食事が面白かったこと。
今度の山本さんとの食事会が楽しみなこと。
他愛もない話を、いつものように笑いながら話してくれます。
わたしも笑いながら返事をしました。
でも心の中では、ずっと同じ言葉が引っ掛かっていました。
「さっきまで元彼とやり取りをしていました」
言えない。
言ったら傷付けてしまう。
でも、隠していることも苦しい。
そんな葛藤を抱えたまま、電話は終わろうとしていました。
その時です。
佐藤さんが、不意にわたしの名前を呼びました。「ななさん、俺さ、ななさんには隠し事しないって決めてるんだ」
その一言で、心臓が止まりそうになりました。
まるで、全部見透かされているような気がしたんです。
わたしは返事をすることができませんでした。
次回へ続きます。
今回も読んでくれてありがとうございます。