翌日。
昨日のディナークルーズが夢だったんじゃないかと思うくらい、朝から幸せな気持ちでした。
胸元には、佐藤さんからもらったルビーのネックレス。
鏡を見るたびに自然と笑顔になります。
でもスマホの中には、まだ消せていないマッチングアプリがありました。
「あとで消そう」そう思ったまま、時間が過ぎてしまっていたんです。
もちろん、誰ともやり取りはしていません。
新しく届く「いいね」も、メッセージも開かないまま。
そして、あの"裕太"という名前の男性から届いた「いいね」も、そのまま放置していました。
佐藤さんの同じ職場の人だから、佐藤さんと顔見知りって可能性もあるのに。
別人だと分かっているのに、何となく削除できない。
そんな自分が少し嫌でした。
仕事を終えて家へ帰る頃、佐藤さんからLINEが届きます。
「お疲れさま😊」
「今日もお仕事お疲れさま😊」
いつものやり取り。
それだけで安心します。
少しやり取りをしていると、佐藤さんから一通のメッセージが届きました。
「そういえば、この前ベビー用品店で会った山本さん覚えてる?」
もちろん覚えています。
「おとうしゃん?」
と言われて、みんなで大笑いした山本さん一家です。
「もちろん😊」
そう返すと、すぐに返信が届きました。
「山本さんから連絡があってさ、今度、会社の人も何人か呼んでご飯しようって誘われたんだ😊」
思わず笑ってしまいました。
「楽しそう😊」
すると佐藤さんから
「ななさんも来てほしいって言ってたよ」
「えっ、わたしも?」
「うん😊 山本さんがまた会いたいって」
その一文が嬉しくて、思わず頬が緩みます。
「じゃあ行きたい😊」
そう返すと
「よかった、じゃあ日にち決まったら連絡するね」
その日は、それ以上深く考えることはありませんでした。
山本さん夫婦にも、また会える。
佐藤さんの職場の人とも話せる。
楽しみだな。
そんな軽い気持ちだったんです。
でも、わたしはまだ知りませんでした。
その食事会で、マッチングアプリに表示されていた、あの男性と顔を合わせることになるなんて。
そして、その瞬間、思わず
「えっ⋯!」
と声が出そうになる出来事が待っているなんて、この時のわたしは想像もしていなかったんです。
次回へ続きます。