プロフィール写真はスーツ姿。
年齢、四十一歳。
趣味はキャンプと釣り。
もちろん、会ったことはありません。
でも、同じ会社というだけで急に胸がザワつき始めたんです。
もし、この人が佐藤さんを知っていたら。
もし、わたしが何も知らずに「いいね」を返していたら。
世間って、思っているよりずっと狭い。
そんなことを考えていると、プロフィールの最後に書かれていた一文が目に入りました。
『最近、同じ職場の後輩に彼女ができて幸せそうなので、自分も真剣に相手を探しています』
後輩⋯。
まさか。
頭の中に浮かんだのは、さっきまで未来の話をしてくれていた佐藤さんでした。
その瞬間でした。
「ただいま」
佐藤さんがお手洗いから戻ってきたんです。
わたしは慌ててスマホの画面を伏せました。
「どうした?」
「ううん、何でもない」
笑顔を作ったつもりでした。
でも、自分でも分かるくらい少しぎこちなかったと思います。
佐藤さんは何も気付かず席に座り、お水を一口飲みました。
わたしのスマホの中には、まだマッチングアプリ。そして、佐藤さんと同じ会社の男性のプロフィール。
削除ボタンは、あと一回押すだけ。
それなのに。
指が動きませんでした。
「あとで消そう」
そう思っただけでした。
本当に、そのつもりでした。
でも、その"あとで"が、後になってわたしを苦しめることになるなんて。
この時のわたしは、まだ知る由もなかったんです。
次回へ続きます。