目の前には、大きなクルーズ船。

「えっ⋯」

「ディナークルーズ?」


驚いて佐藤さんを見ると、少し恥ずかしそうに頷きます。

「二人のお祝いだから、思い出に残る日にしたくて」

胸がじんわり温かくなりました。


船に乗り込み、案内されたのは窓際の個室。

船がゆっくり港を離れると、大きな窓いっぱいに夕暮れの海が広がります。

「すごい⋯」思わず声が漏れました。


運ばれてきた料理も本格的で、一品一品がとても綺麗です。

「美味しい」

「本当だね」

そんなふうしながら食べる時間も、全部が楽しく感じました。


食事をしながら話題になったのは、やっぱりこの前のベビー用品店での出来事でした。

「店員さん、本気で夫婦だと思ってたね」

わたしが笑うと

「しかも、お父さんお母さんだからね」

佐藤さんも思い出して笑います。


「山本さん夫婦にも会えたし、本当に色んなことがあった一日だったね」

「男の子の『おとうしゃん?』は忘れられないなぁ」

思い出すたびに二人で笑ってしまいました。


しばらく夜景を眺めていると、佐藤さんが海の向こうを見ながら小さく言います。

「いつかさ、子どもができたら、一緒にまた来たいね、今度は三人で」

その言葉を聞いて、わたしは静かに夜景へ目を向けました。


少し前なら、不安の方が先に浮かんでいたかもしれません。

でも今日は違いました。

未来を一緒に想像してくれる人が隣にいる。

それだけで十分幸せだと思えたんです。


食後のデザートを食べ終えた頃、佐藤さんが少し緊張した表情で、小さな箱を取り出しました。

「ななさん、遅くなっちゃったけど⋯誕生日プレゼント」

そう言って、わたしの前にそっと箱を置いたんです。


次回へ続きます。