「僕、もっと大きいと思ってました」
「佐藤さん、何を想像してたんですか」
笑いながら歩いていると、近くにいた店員さんが優しく声を掛けてくれました。
「お父さん、お母さん、こちらのコーナーも人気ですよ」
一瞬、二人とも固まりました。
そして次の瞬間
「違います違います」
声が重なります。
店員さんも
「あっ、ごめんなさい」
と笑っていました。
でも、不思議でした。
夫婦に間違えられたことが嫌じゃなかったんです。むしろ少しだけ照れくさくて、嬉しかった。
店員さんが離れたあとも、わたしたちは顔を見合わせて笑っていました。
「お父さんって言われましたね」
「僕、まだ心の準備ができてません」
そんな他愛もない会話が、とても幸せでした。
しばらく店内を歩いていると、突然後ろから声が聞こえます。
「あれ⋯佐藤くん?」
二人同時に振り返りました。
そこに立っていたのは、小さな男の子の手を引いた女性と、その隣にいる男性。
佐藤さんの表情が一瞬驚いたように変わります。「えっ⋯山本さん?」
どうやら職場の人のようでした。
女性はわたしたちと店内を見渡し、意味ありげにニヤリと笑います。
「えー!佐藤くん、彼女いたの!?」
その一言に、わたしも佐藤さんも顔を見合わせました。
この偶然の再会が、このあと予想もしないご縁に繋がるなんて──。
この時のわたしたちは、まだ知る由もありませんでした。
次回へ続きます。