電話を切ったあとも、しばらくスマホを握ったままでした。
胸の奥が温かい。
そんな感覚でした。
今まで何人かの人と付き合ってきました。
でも、相手の親にここまで祝福されたことなんてありません。
だから余計に嬉しかったんです。
わたしは、ちゃんと将来を考えてもらえている。
そう思えたから。
でも同時に、不安もありました。
わたしは四十歳。
妊活をしている。
子宮内膜症もある。
子供が出来にくいかもしれないと医者に言われている。
それでも佐藤さんは、ご両親に全部話してくれました。
隠さず、誤魔化さず。
その誠実さが、本当に嬉しかったんです。
その夜は、なかなか眠れませんでした。
ベッドに入っても、佐藤さんとの電話を何度も思い出します。
「ちゃんとななさんと向き合っていこうって思いました」
その言葉が何度も頭の中で繰り返されました。
そして、ふと思ったんです。
わたしは佐藤さんに、ちゃんと向き合えているのかな。
過去ばかり見ていなかったかな。
裕太。
Fさん。
今までの恋愛を引きずったまま、佐藤さんと付き合ってしまっていないかな。
過去の恋愛が気になりつつも、佐藤さんだけを見ていると自分に言い聞かせていないか。
そんなことを考えているうちに、少しだけ申し訳ない気持ちになりました。
もちろん、もう裕太とは終わりました。
Fさんとも終わりました。
でも、心の整理には少し時間が必要だったのも事実です。
だからこそ思いました。
改めてもう前だけを見よう。
佐藤さんは、こんなにも真っ直ぐわたしを見てくれている。
だったら、わたしも同じように向き合いたい。
そう思えたんです。
次回へ続きます。
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