部屋は静まり返っていました。
佐藤さんはすぐには答えません。
少し俯いて、何かを考えているようでした。
やっぱり重かったかな⋯。
そう思った時でした。
佐藤さんがゆっくり顔を上げます。
「話してくれてありがとうございます」
その一言に、少しだけ肩の力が抜けました。
そして佐藤さんは真っ直ぐわたしを見ます。
「正直、びっくりしました」
わたしは小さく頷きます。
「でも」
少し照れたように笑って続けました。
「ななさんが、それだけ真剣に将来を考えてるってことですよね」
わたしは何も言えませんでした。
「僕は恋愛経験も多くないです」
「女性の気持ちも、正直まだ分からないことばかりです」
「だから、不安もあります」
一度言葉を切ります。
「でも」
「もし、ななさんが僕と一緒に歩いていこうと思ってくれるなら」
「僕も逃げません」
胸が熱くなりました。
佐藤さんは少し恥ずかしそうに笑います。
「頼りないところもあると思います」
「男らしく引っ張っていけるタイプでもないです」「それに⋯」
頭をかきながら苦笑いしました。
「こういうことも、僕は全部初めてみたいなものなので」
「たぶん、ななさんに迷惑を掛けることもあると思います」
思わず笑ってしまいました。
そんなことまで正直に言うんだ。
本当に、この人らしい。
すると佐藤さんは少し照れながら言いました。
「でも、その分ちゃんと頑張ります」
「ななさんが一人で抱え込まなくていいように」「赤ちゃんのことも、将来のことも」
「二人で考えていきたいです」
その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていたものが、一気にほどけました。
わたしは、この人を信じてみたい。
心からそう思ったんです。
次回へ続きます。
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