そして佐藤さんと比較すると裕太のクズさが際立ちます。

裕太は

『そうなんだ』

たったそれだけ。

境界悪性。

怖がりなわたしにとってその言葉がどれだけ怖かったか。

結果を聞くまでどれだけ不安だったか。

裕太は知っているはずなんです。

付き合っていた頃、検査の日が近付くたびにわたしが落ち着かなくなることも。

結果を聞くまで眠れなくなることも。

全部知っている。


それなのに返ってきたのは

『そうなんだ』

だけでした。

その瞬間、悲しいを通り越して腹が立ったんです。


わたしはスマホを握りしめました。

そして気付いたんです。

何を期待していたんだろうって。

今さらじゃないかって。


この人はずっとそうだった。

口では優しいことを言う。

甘いことも言う。

でも現実が面倒になると逃げる。

困ったら親に頼る。

都合が悪くなったら誰かに丸投げする。

何度も何度も同じことを繰り返してきた。


わたしはトーク画面を見つめました。

そして怒りが込み上げてきたんです。

同棲していた時のこと。

親に全部話したこと。

何股もかけていたこと。

子どもができていること。


全部知っている。

全部知っているのに。

この人はまだわたしに『会いたい』と言った。

『好きだ』と言った。

父親になる立場なのに。

何も整理できていないのに。

わたしにも手を伸ばした。

その事実が急に重くのしかかってきたんです。


今まで見ないふりをしていたものが、一気に目の前へ並べられたみたいでした。

好きだから許していた。

好きだから目を逸らしていた。

好きだから信じたかった。


わたしはスマホを開きました。