診察室を出て会計を待ちながら、わたしはスマホを取り出します。
無意識でした。
LINEを開きます。
通知はありません。
少しだけ肩の力が抜けました。
そして少しだけ残念でした。
自分でも意味が分かりません。
連絡が来ていたら嬉しい。
来ていなかったらホッとする。
そんな状態だったんです。
病院を出ます。
駅へ向かいます。
電車を待ちます。
その間も何度かスマホを見ました。
通知はありません。
昨日の夜。
『終わったら連絡して』『待ってるから』
そう言ってくれたのは裕太でした。
だから勝手に期待していたんです。
病院どうだった?大丈夫だった?
そんなLINEが来るんじゃないかって。
でも来ませんでした。
『そっか』の三文字が頭に浮かびます。
電車に乗っても、家に帰っても、来ませんでした。夕方になりました。
それでも来ません。
夜になりました。
それでも来ません。
気付けば何度もLINEを開いていました。
何か通知を見落としているんじゃないかと思うくらい。
でも現実は変わりません。
何も来ていないんです。
そこで初めて思いました。
もしかして、わたしが勝手に期待していただけなんじゃないか。
心配してくれていると思っていた。
気に掛けてくれていると思っていた。
でも、それはわたしの思い込みだったのかもしれない。
昨日はあんなに優しかったのに。
あんなに会いたいと言っていたのに。
たった一日で何もなくなる。
それがこの人なんだろうか。
いや、思い起こせば裕太は最初から、そんなにわたしに対して思い入れはなかったのかもしれない。
そう思った瞬間、病院の結果よりも別の意味で胸が苦しくなりました。
そしてわたしは、スマホをそっと伏せたんです。
次回へ続きます。