父親になる。

子どもは産まれる。

でも、ななと一緒に居たい。

全部を同時に手に入れられるみたいな顔をしているんです。

現実はそんなに都合良くありません。


「ねぇ裕太」

わたしは静かに言いました。

「じゃあどうするの?」 

裕太は黙ります。

「子どもは産まれるんでしょ?」

沈黙。

「父親になるんでしょ?」

沈黙。

「香織さんはどうするの?」

沈黙。


わたしはその瞬間に分かってしまいました。

裕太は何も決めていない。

ななを選びたい。

でも父親にはなりたい。

香織さんとも揉めたくない。

全部欲しいだけなんです。

現実の整理は何一つ出来ていない。


わたしはため息を吐きました。

それでも。

それでもなんです。

目の前に居る裕太を見ていると、嫌いになり切れない自分が居ました。

本当に救いようがないなと思います。

わたしも。

裕太も。


次回へ続きます。