わたしに断るという選択肢はありませんでした。
約束の日。
わたしは裕太と向かい合って座っていました。
前回と同じように落ち着かない。
でも違ったのは、会いたいと思って来てしまったことです。
少し前のわたしなら認めなかったかもしれません。でも今は認めるしかありませんでした。
わたしは裕太に会いたかった。
会えば苦しくなると分かっていたのに。
それでも会いたかったんです。
裕太はコーヒーを一口飲みました。
しばらく他愛もない話をします。
仕事の話。
最近の話。
でも、わたしの頭の中にあるのは一つだけでした。
結局聞いてしまいます。
「ねぇ」
裕太が顔を上げました。
「香織さんのこと、どうなったの?」
その瞬間、 裕太の表情が少しだけ変わったんです。
さっきまで笑っていた顔から笑みが消えます。
沈黙。
数秒。
わたしは嫌な予感がしました。
そして裕太は小さく息を吐きます。
「その話、ちゃんとしなきゃと思ってた」
胸がざわつきました。
裕太は視線を落とします。
「香織とは話した」
わたしは黙って聞いていました。
「俺、自分でも最低だと思う」
その言葉に苦笑いしたくなります。
今さらです。
でも裕太は続けました。
「子どものことも含めて話した」
わたしの心臓が大きく鳴ります。
裕太はしばらく黙りました。
そして
「香織、めちゃくちゃ怒った」
そう言ったんです。
次回へ続きます。