「久しぶりに声聞いた」
その一言に、わたしは何も返せませんでした。
電話の向こうで裕太が少し笑います。
「緊張してる?」
「してない」
反射的に答えました。
すると裕太が笑ったんです。
「嘘つけ」
その言い方が懐かしくて。
思わずわたしも笑ってしまいました。
本当に悔しいです。
ついさっきまで泣きそうだったのに、もう笑っているんですから。
しばらく他愛もない話をしました。
仕事の話。
最近観たテレビの話。
天気の話。
本当にどうでもいいことばかりです。
すると突然、裕太が言いました。
「あの時さ」
「なながスーパーでカート暴走させたの覚えてる?」
わたしは思わず吹き出しました。
「あれ裕太が変な押し方したからでしょ!」
「いや、ななが急に方向転換したんだろ」
「してない!」
電話の向こうで裕太が笑っています。
わたしも笑っていました。
そして気付きます。
こんなふうに笑ったの、いつ以来だろう。
次回へ続きます。