個室居酒屋に入ってからも、わたし達は色んな話をしました。
仕事のこと。
休日のこと。
好きな食べ物のこと。
本当に普通の会話です。

でも不思議でした。



沈黙になっても気まずくないんです。
無理に盛り上げようとしなくてもいい。
変に気を遣い過ぎなくてもいい。

佐藤さんはお酒を飲みながら笑いました。



「なんか、ななさんといると落ち着きますね」
わたしは少し驚きました。
それ、わたしが思っていたことだったからです。
「そうですか?」
「はい」
照れたように笑います。
その顔を見て、わたしも笑いました。


優しい人だな。

素直にそう思ったんです。
裕太みたいなドキドキはありません。
何を考えているか分からない不安もありません。
連絡が来ない苦しさもありません。
ジェットコースターみたいな恋愛じゃない。


でも

こういうのも悪くないのかもしれない

そう思いました。


帰り際。
駅の改札前で佐藤さんが言いました。
「また会えますか?」
わたしは少しだけ考えました。
そして頷きます。
「はい」
佐藤さんは嬉しそうに笑いました。
「良かった」
その顔を見ていると、胸が少し温かくなります。
わたしは手を振って改札を通りました。


そして電車に乗ります。

窓に映る自分の顔を見ながら思いました。


もしかしたら。
こういう人を好きになる方が幸せなのかもしれない。


その時でした。

スマホが震えたんです。
何気なく画面を見ます。

そして

心臓が止まりそうになりました。


裕太からでした。
『今日、何してた?』

次回へ続きます。




この日は何を着ていくか結構悩みました。

ワンピースって便利。