スマホを見つめたまま動けませんでした。
『ななさん、今週あたりお時間ある日ありますか?』
佐藤さんらしい文章でした。
丁寧で。
真面目で。
変な駆け引きもありません。
本来なら嬉しいはずなんです。
実際、二回会った時も楽しかった。
優しかったし。
ちゃんとわたしの話を聞いてくれたし。
また会いたいと思っていました。
少なくとも、あの頃は。
でも今は違いました。
頭の中がぐちゃぐちゃなんです。
裕太。
香織さん。
赤ちゃん。
今日の会話。
全部がまだ残っていました。
わたしは返信画面を開きます。
『今週なら』
そこまで入力して止まりました。
本当にいいのかな。
佐藤さんと会って。
笑って。
ご飯を食べて。
そんなことをしていいんだろうか。
いや。
別に悪いことじゃありません。
わたしは独身です。
誰にも縛られていません。
それなのに。
なぜか後ろめたい気持ちになるんです。
わたしはスマホを閉じました。
しばらくしてグループLINEの通知が表示されました。
真由さんです。
『元気ですよー😊』
『仕事が忙しくて死んでますけど(笑)』
思わず少し笑いました。
続いて美咲さんからも通知が来ます。
『私は相変わらずです😂』
『最近裕太のこと考える時間が減ってきました』
そのメッセージを見て、胸の奥が少しチクリとしました。
二人とも前を向こうとしている。
わたしだけがまだ足踏みしているような気がしたんです。
グループLINEはそれ以上特に変わりませんでした。
裕太の名前も出ません。
連絡が来たなんて話もありません。
少なくとも今のところ。
本当に、裕太が連絡したのはわたしだけなのかもしれない。
次回へ続きます。
