最低な男です。
それは間違いありません。
何人もの女性を傷付けた。
香織さんのお腹には子どもまでいる。
普通なら答えは簡単なはずでした。
でも人を好きになる気持ちって、そんなに単純じゃないんです。
最低だから嫌い。
優しいから好き。
そんなふうに綺麗に分けられません。
どんなに最低でも。
どんなに腹が立っても。
裕太が気になる自分が居ました。
だから余計に苦しいんです。
家へ帰る途中、わたしはスマホを開きました。
頭に浮かんだのは別のことでした。
もしかして。
裕太。
美咲さんや真由さんにも同じこと言ってないよね?
あの日、わたしだけに連絡したと言っていた。
でも信用できるかと言われたら別です。
わたしはグループLINEを開きました。
そして出来るだけ自然に送ります。
『そういえば最近みんな元気ですかー?』
我ながら下手だなと思いました。
でも仕方ありません。
探りを入れているなんて思われたくなかったんです。
送信した瞬間、スマホが震えました。
早い。
真由さんかな。
そう思って画面を見ると、違いました。
佐藤さんでした。
わたしは思わず固まります。マッチングアプリで知り合った素人童貞の佐藤さん。
二回会ってまた会いたいと思っていた人です。
でも、裕太のことが起きてから、正直それどころじゃありませんでした。
返信も遅くなっていたし、半分放置みたいになっていました。
画面にはメッセージが表示されています。
『ななさん、今週あたりお時間ある日ありますか?』
胸の奥がざわつきました。
裕太。
佐藤さん。
過去と未来。
まるでどちらかを選べと言われているみたいだったんです。
次回へ続きます。
暑くなってきました。