その日は、それ以上話をしませんでした。


わたしも、裕太も、これ以上続けても同じ気がしたんです。

答えなんて出ない。

少なくとも今は。


駅前で別れ際、裕太が小さく言いました。

「今日は来てくれてありがとう」

わたしは曖昧に頷くだけでした。

そして背中を向けます。 

振り返りませんでした。

振り返ったら何かが変わってしまいそうだったからです。


帰り道、夕暮れの街を一人で歩きました。

空はオレンジ色に染まっています。

涙が出そうに綺麗な色です。


その時でした。

前から小さな男の子が走ってきたんです。

「待ってー!」

楽しそうな声。

少し後ろを、お父さんとお母さんが笑いながら追いかけています。

三人とも本当に幸せそうでした。


わたしは思わず足を止めました。

胸が痛かった。

羨ましかったんです。

家族。

夫婦。

子ども。

わたしが欲しかったもの。

裕太と一緒に見ていた未来。


もし裕太ときっぱり終わらせれば、わたしにもあんな未来が近付くのかもしれない。

そう思いました。

でも、同時に別の気持ちも湧いてきます。

本当に終われるの?

わたしは小さくため息を吐きました。


次回へ続きます。