「まず最初に謝りたかった」

裕太はそう言うと、しばらく黙りました。

わたしも何も言いません。

駅前には人が行き交っています。

でも、わたし達の周りだけ時間が止まったみたいでした。


裕太が小さく息を吐きます。

そして

「病院行ったんだ」

その言葉に胸がざわつきました。


香織さんのことだとすぐ分かりました。

裕太は続けます。

「やっぱり子ども出来てた」

わたしは何も言えませんでした。


そうなんだ。

まず最初にそう思いました。

あの日はまだ病院へ行っていなかった。

だから結果が出たんだ。

ただそれだけなのに。

胸の奥が少し苦しくなります。


裕太は俯いたままでした。

「母さんにも色々言われた」

「香織とも話した」

そして、次の言葉にわたしは固まりました。


「でも」

裕太が顔を上げます。

「俺、親になる実感が湧かないんだよ」

思わず眉をひそめました。

何言ってるの?

そんな気持ちでした。


裕太は続けます。

「いや、違うな」

「実感が湧かないっていうか」

言葉を探すように黙ります。


そして

「一緒に子どもを育てていく、家族になる相手は香織じゃない気がする」


次回へ続きます。