「本当は皆さんにも最後まで聞いていただくべきかもしれません」

少し迷うように言葉を選びます。

「でもここから先は、香織さんとお腹の子の話になります」

真由さんが小さく頷きました。

美咲さんも黙って聞いています。


母親は続けます。

「皆さんには十分すぎるほど傷付けてしまいました」

「だからこれ以上巻き込みたくありません」

わたしは香織さんを見ました。

香織さんは不安そうな顔をしていました。

でも、お腹を守るように手を添えていました。


その姿を見た瞬間、わたしの中で何かがストンと落ちた気がしたんです。

もう次のステージなんだ。

そう思いました。


真由さんが立ち上がります。

「分かりました」

美咲さんも続きました。

「私も帰ります」

そして二人はわたしを見ます。

わたしは少しだけ裕太を見ました。


もう何も言う気になれませんでした。

代わりに香織さんへ言ったんです。

「体だけは大事にしてください」

香織さんの目にまた涙が浮かびました。

「ありがとうございます」小さな声でした。

わたし達三人は席を立ちます。


玄関へ向かう途中、後ろから母親の声が聞こえました。

「裕太」

振り返りませんでした。

でも、その声が今までで一番重かったことだけは分かりました。


そして玄関のドアが閉まる直前、母親が続けて言った言葉が聞こえたんです。

「これからは逃げることを許しません」


次回へ続きます。