その時でした。
今まで黙っていた美咲さんが小さく息を吐いたんです。
「そうだったんですね⋯」
美咲さんは香織さんを見ていました。
そして少しだけ笑いました。
でもその笑顔は寂しそうでした。
「おめでとうございますって言う状況じゃないですよね」
香織さんも苦笑いします。
「そうですね⋯」
二人のやり取りを聞きながら、わたしは美咲さんを見ました。
そういえば、美咲さんは三十九歳でした。
わたしの一つ下。
最初はもっと若いと思っていました。
でも同世代でした。
きっと、美咲さんにも色々な思いがあるはずです。結婚。
出産。
年齢。
わたし達くらいになると、その話は避けて通れません。
美咲さんはしばらく黙っていました。
そしてぽつりと言ったんです。
「なんか⋯馬鹿みたいですね」
全員が顔を上げました。
「私達」
美咲さんは笑います。
でも目は笑っていませんでした。
「同じ男の言葉を信じて」
真由さんが目を伏せます。
わたしも何も言えません。
美咲さんは続けました。
「しかも最後は妊娠してる人まで出てきて」
その言葉に部屋の空気がさらに重くなります。
すると、今まで黙っていた裕太の母親が、ゆっくり裕太へ向き直りました。
そして、テーブルの上に置かれていたスマホを手に取ったんです。
「裕太」
嫌な予感がしました。
母親の顔を見た瞬間に分かったんです。
何かが始まる。
そう思いました。
そして次の言葉で、部屋の空気は再び凍り付きました。
「まだ確認していない女性がいるなら、今ここで全部連絡先を出しなさい」
次回へ続きます。
妊活中は葉酸サプリも飲んでいました