誰も動きません。
わたしも。
真由さんも。
美咲さんも。
裕太の母親でさえも。
香織さんは目を伏せたまま続けます。
「だから一度ちゃんと話をしようと思って」
裕太を見ました。
「連絡もしたんです」
裕太がゆっくり顔を下げます。
香織さんは苦しそうに笑いました。
「でも返事が来なくて」
その言葉に胸がざわつきました。
返事が来ない。
その言葉に覚えがありすぎたからです。
「だから直接来ました」
香織さんはそう言って周囲を見渡しました。
そして、初めて気付いたように呟いたんです。
「でも……」
真由さん。
美咲さん。
わたし。
三人を順番に見て
「私以外にも居たんですね」
その言葉に、今度は裕太の母親がゆっくり椅子から立ち上がりました。
次回へ続きます。