裕太は何かを言いかけます。 

でも、 すぐには答えませんでした。 

その沈黙が、何より怖かったんです。


美咲さんがもう一度聞きました。 

「居るんですか?」

裕太は視線を落としたままです。

誰も動きません。

時計の音だけが聞こえていました。 

やがて、裕太が小さく口を開きます。 

「今は居ない」

その言葉に誰も安心しませんでした。

むしろ逆でした。 

今は。 

その言い方が引っ掛かったんです。


真由さんがすぐに聞き返しました。 

「今は?」 

裕太は何も言いません。 

真由さんの表情が変わります。 

「じゃあ居たんですね」 

裕太はまた黙りました。

その瞬間、答えを聞いた気がしました。


わたしの胸の奥が冷たくなります。 

美咲さんも目を閉じました。 

裕太の母親も息を吐きます。 

誰も驚いていないのに、誰も言葉が出ませんでした。 


すると母親が静かに聞いたんです。 

「何人なの?」 

裕太が顔を上げます。

母親は真っ直ぐ息子を見ていました。 

「私は人数を聞いてるの」 

今までで一番静かな声でした。

でも一番怖い声でした。

裕太はしばらく黙っていました。


そして、 観念したように口を開いたんです。

「正確には⋯」

その瞬間、 玄関のインターホンが鳴りました。 

全員が同時に振り返ります。 

誰も呼んでいないはずでした。 

裕太も固まっています。 

母親が眉をひそめました。 


「誰?」真由さんと美咲さんも顔を見合わせます。わたしだけじゃありません。 

全員が同じことを思っていました。 

まさか――。 

次回へ続きます。



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