出てきたのは裕太の母親でした。

わたしを見るなり少しだけ表情が変わります。

わたしも思わず身構えました。

あの日のことを思い出したからです。


でも裕太の母親は何も言いませんでした。

「どうぞ」

それだけでした。

わたし達は家の中へ入ります。

リビングへ案内されました。

そして、わたしは思わず足を止めました。


裕太が居たからです。

久しぶりに見る裕太でした。

でも、思っていた様子と違いました。


顔色が悪かったんです。

目の下にはクマが出来ていました。

裕太もわたし達を見ました。

最初にわたし。

次に美咲さん。

そして真由さん。

順番に視線を移します。


誰も何も言いません。

重苦しい沈黙だけが流れました。

その時でした。


裕太の母親が口を開いたんです。

「今日は私から先に話させてください」

わたしは思わず顔を上げました。

すると母親は真っ直ぐこちらを見ながら言いました。

「実は私、今日初めて知ったことがあるんです」


その言葉に全員が固まりました。

初めて知った?

何を?

わたし達が顔を見合わせた時でした。


裕太が小さな声で言いました。

「母さん、それは……」

でも母親は首を横に振ります。

そして静かに続けました。


「あなた達は、裕太から同じ話を聞かされていたんじゃない?」


次回へ続きます。



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