「裕太くんから聞いていました」
店内の音が遠くなった気がしました。
美咲さんも驚いた顔をしています。
わたしは言葉が出ません。
聞いていた?
わたしのことを?
「どういう風にですか?」
自分でも驚くくらい低い声が出ました。
真由さんはテーブルに視線を落とします。
「最初は元カノだって聞いていました」
わたしは息を止めました。
元カノ。
その言葉だけで十分でした。
でも真由さんは続けます。
「でも話を聞いているうちに、なんだかおかしいなと思うことが増えてきて」
わたしは黙っていました。
「だって別れているはずなのに」
真由さんは苦笑いしました。
「ななさんの話、すごくよく出てくるんです」
わたしは何も言えませんでした。
真由さんは続けます。
「今日は連絡が来た」
「今日は機嫌が悪い」
「今日はこんなことを言われた」
一つ一つ挙げていきます。
「その度に胸がざわつきました
別れた相手の話とは思えませんでした
むしろ、今でも関係が続いている人の話みたいでした、だから変だなって思ってたんです」
真由さんが言いました。
「でも、その時はまさか私以外にも女性がいるなんて思いませんでした」
その言葉に、美咲さんが苦笑いしました。
「私もです」
わたしも思わず笑ってしまいました。
店員が先程真由さんが注文したコーヒーを運んできました。
女性三人で笑ってコーヒーを飲んでなんだか一瞬、女子会でもしているような錯覚に陥りそうでした。笑うような話じゃないのに。
なんだか笑うしかありませんでした。
すると真由さんの表情が少し変わりました。
何か言いづらそうにしています。
わたしはその変化に気付きました。
「どうしたんですか?」
そう聞くと、真由さんはわたしと美咲さんを交互に見ました。
そして小さな声で言いました。
「実は、まだ話していないことがあるんです」
その瞬間、また嫌な予感がしました。
真由さんはスマホを取り出しました。
そして画面を開きます。
「これを見てください」
わたしは画面を覗き込みました。
そこに表示されていたものを見て、わたしは言葉を失いました。
次回へ続きます。