「一度だけ、お話できませんか?」
わたしはそのメッセージを何度も読み返しました。
そして、その少し上にある文章にも目を向けました。
「私も騙されていたみたいです」
正直、信じられませんでした。
数時間前まで、この女性は裕太の婚約者だと言っていたんです。
それなのに今さら騙されていた?
だったらあの時は何だったんだろう。
わたしはスマホを握りしめました。
気持ち悪い。
関わりたくない。
そんな気持ちもありました。
でも気になる。
ものすごく気になる。
もし本当に騙されていたのなら。
もしわたしの知らないことがあるのなら。
聞かずに終わることは出来ませんでした。
わたしはしばらく悩んだあと、
「何のお話ですか?」
と返信しました。
数分後。
すぐに返事が来ました。
まるでスマホを握ったまま待っていたみたいに。
「文章では伝わらないと思うので、一度お会いできませんか?」
わたしは思わずため息をつきました。
面倒くさい。
だったら最初から全部書いてくれればいいのに。
でも、文章に残したくない内容なのかもしれません。
そう思うと余計に気になりました。
さらにメッセージは続いていました。
「信じてもらえないと思いますが、私も今日初めて知ったことがたくさんあります」
今日初めて知ったこと。
その言葉が引っ掛かりました。
わたしが知らなかったこと。
この女性が知らなかったこと。
裕太だけが知っていたこと。
一体どれだけあるんだろう。
少し迷いました。
本当は会いたくありません。
でも、ここで断ったら。
きっとわたしはずっと気になるままです。
わたしはスマホを見つめながら、
「分かりました」
とだけ返信しました。
するとすぐに日時と場所が送られてきました。
指定されたのは、裕太の家とわたしの家の中間地点辺りにある駅前のカフェでした。女性がわたしの最寄り駅を知っているのかはわかりません。
最後に女性から一文だけ送られてきました。
「来てくださってありがとうございます」
その文章を見て、また少しだけ違和感を覚えました。
まだ行くと決めただけなのに。
まるでわたしが必ず来ると分かっていたみたいでした。
約束の日は二日後。
わたしはスマホを伏せました。
そして天井を見上げました。
終わったと思っていた話は、まだ終わっていなかったみたいです。
次回へ続きます。