バス停に着いても、わたしはしばらくベンチに座ることが出来ませんでした。

なんとなく立ったまま時刻表を見ました。

あと10分。 

いつもなら長く感じる10分なのに、その日はあっという間でした。 


頭の中はずっとさっきの光景でいっぱいでした。 

婚約者。 

その言葉だけが何度も浮かんできます。

不思議と涙は出ませんでした。

悲しすぎると涙も出ないって本当なんだなと思いました。 


スマホを取り出しました。 

LINEを開きました。

裕太のトーク画面はありません。 

自分でブロックして削除したからです。


少し前までは、それを解除することばかり考えていました。 

会いたい。 

声が聞きたい。 

連絡したい。

そんなことばかり考えていました。


なのに今は違いました。

もし今、裕太から連絡が来たとしても。

もし今、全部誤解だと言われたとしても。 

何を信じればいいのか分かりません。 


バスが来ました。 

わたしは一番後ろの席に座りました。 

窓の外を見ていると、景色がゆっくり流れていきます。

裕太の家の近くを通り過ぎた時、なんとなく目を逸らしました。

見たくありませんでした。 

見たらまた期待してしまう気がしたからです。


それなのに。 

心のどこかで、
今から裕太が追いかけてきて、
バスを止めて、
全部説明してくれたらいいのに。

そんなことを考えていました。


我ながら馬鹿だなと思います。

婚約者が居ると言われたばかりなのに。 

でも好きだった。 

本当に好きだった。 

だから簡単には諦められませんでした。


家に着いても部屋の電気を付ける気になれませんでした。 

暗い部屋の中で座り込んでいると、急に現実感がなくなりました。 

数時間前まで、
わたしは裕太に会えば何とかなると思っていました。 

それが今は、
婚約者が居ることを知って、一人で部屋に居ます。 

人生って数時間でこんなに変わるんだなと思いました。 


その時です。 

机の上に置いたスマホが震えました。 


次回に続きますが、

今回で「LINEブロックしたのはわたしだけど彼氏の家に突撃した」シリーズは終了です。
次回から新しいタイトルで続きを書こうと思います。