筆者は元は宝塚歌劇ファンであったが,「宙組事件」前から宝塚歌劇の観劇を止め,最近は宝塚歌劇団関連のグッズも購入せず,動画配信・音楽配信も利用していない.「消費も意思表示」と思うと,現状で宝塚歌劇団にお金を落とすことはパワハラと人権侵害への賛同に等しいという考えを捨てきれないのだ.

 筆者から見て赤の他人がどうされようと自由だが,筆者の家族や友人が今も宝塚歌劇を観劇し,熱心にグッズ等買い漁っていたら,或いは別のジャンルでそれに等しい行動をとっていたら,その人とは精神的に距離を置こうとする程度にはショックを受けそうだ.



 亡くなった宙組劇団員が宙組で受けたパワハラが特に悪質で酷いものだった.しかし,今週の文春報道によると,宝塚歌劇団における虐め・パワハラ問題は宙組に限った話ではないのだろう.

「宙組事件」に関する週刊誌報道が結果的にほぼ事実であったことから,今回の星組現役生の内部告発も大まかに「いつ誰が誰に何をしたか」くらいは事実と見た方が良さそうだ.

 

 「宙組事件」後も「宙組は観ないが,他組は観る」ファンはSNSやブログ等で普通に見られる.

この手のファンは

・宙組以外の組ではパワハラは酷くない.

・宙組以外の組に属する贔屓は虐めやパワハラに無関係でクリーンな存在である.

事を前提に他組の観劇を続け,宝塚歌劇団のグッズ等を購入しているものと想像する.


 しかし,(おそらく)事実として,「宙組事件」後,もうパワハラは無いものと想定されていた星組公演でさえもパワハラや過重労働は続いていた.

現在の宙組以外の組がパワハラのない安全な団体で,其方の贔屓が虐めやパワハラをしてもされてもいない可能性は極めて低いと考えた方が良いのでは?と思い直した今週の文春報道だった.



 実際には,「本当は他組も安全でなく,贔屓が虐め・パワハラに関与している」可能性には気づいていても疑念に蓋をしてまで宝塚を観に行っているファンも少なくなさそうだ.

 しかし,合意締結後の宝塚歌劇団は「宙組事件」を無かったかのように扱い,ファンにも忘れるように「演出」しているのだから,宝塚歌劇を消費しているうちに,疑念も違和感も抱かなくなるだろう.

舞台やスカイステージで「清く正しく美しい」姿を見せておけば,「事件」前のようにファンは宝塚歌劇から愛や希望や幸福を得られるようになる.そうなるまでに時間はかからないと思う.

 

 そして,宙組を批判しながら「宙組のパワハラ行為者(加害者)がどの面下げて舞台に出てくるのか興味本位で観る」と言う人々も今作で,加害者の様子が分かったわけだが,次回作以後はどうするのだろうか?

愛想を尽かして宝塚から去って行く人もいる一方で,中には,また何か理由をつけて宙組も観る人もいるのだろう.

その観客も時が経てば,理由を考えることもなく「事件」前のように自然と観に行くようになると予想する.


 観客がどのように複雑な思いで観劇したとしても,劇団には関係なく,ただ儲かることと公演を実施できた事実のみが重要だとしたら,宝塚宙組に批判的な観客もまた劇団の良いカモなのだ.

 この手の観客があれほど蔑視していた「宙組や加害者の狂信的ファン」とご自身との違いは何なのだろうか?遅かれ早かれ同種のものに成り果てると思う.