昨年9月末に自死した宙組団員が,生前,上級生(成人)にヘアアイロンで額に1ヶ月以上も残る火傷を負わされた「ヘアアイロン事件」が週刊誌で報道された.

 週刊誌報道後,あろうことか「ヘアアイロン事件」行為者が「宝塚グラフ」のインタビューにおいて,この事件を茶化し,被害者(故人)を嘲笑うかのような内容が掲載された.


 3月28日,この「宝塚グラフ事件」(仮称)の経緯が宝塚歌劇団公式ホームページに掲載された.


https://www.tca-pictures.net/info/240328.html


 筆者は過去のブログ記事で,「宝塚グラフ事件」(仮称)に関し以下のように疑問を記した.


『以上を踏まえると,「宝塚グラフ事件」への疑問点は

⑴ インタビュー形式

⑶ 発言者本人による記事の校正の有無

 発言者が編集者に内容の修正を依頼できる環境だったか.

⑸ 出版後の記事を発言者が確認したか.


 上記の疑問が詳らかにならない限り,「上級生(発言者)が被災者に対し、やけどを負わせたことを反省せず、また、被災者を悼む気持ちを持っていないと言わざるを得ない。」との遺族側の主張を当該発言者は否定することはできないだろう.』



 「本記事作成の経緯」から分かったことをまとめる.


⑴ インタビュー形式


 インタビューは、2023年9月11日に担当部門が事前に準備した質問に対して本劇団員が回答する形で行った.


対話形式.


質問「稽古に出発する際の荷物は最低限か、それとも大荷物か」

回答「大荷物」,「色々ハプニング想定して、雨だからカールが取れるかもとなったらコテを持って行かないといけないし」,「汗かいた(場合に備えて)着替えをたくさん持って行くとか、あとは、絆創膏とか」等


これらの発言から,「ヘアアイロンを持って行こうかな」「絆創膏など、欲しくなるかもしれないものがたくさん入っています(笑)」という原稿が出来上がった.


⑶ 発言者本人による記事の校正の有無

 発言者が編集者に内容の修正を依頼できる環境だったか.


 「同種の記事においては劇団員による原稿チェックは通常行われておらず、本記事についても、本劇団員による原稿チェックは行われませんでした。」


 出版前に発言者による確認・校正は無かった.



⑸ 出版後の記事を発言者が確認したか.


 不明.


⑹ 新たな疑問

担当部門が語尾に「(笑)」をつけたのは何故か?


 発言者が笑いながら「ヘアアイロン(コテ)」,「絆創膏」に言及したため,その表情・雰囲気から(笑)をつけたのか,そうでないのか.



まず,当該発言者は同種のインタビューを受けるのが初めてではないのだから,後に原稿に採用される可能性を考えると,問題のある語彙(本件では「コテ」や「絆創膏」)を発言に含めるリスクは分かっていただろう.経緯を知っても尚,発言者への擁護のしようがない.


ただし,宝塚クリエイティブアーツが発表した記事掲載の経緯から,発言者はもとより,担当部門にも問題があると思える.

同種の記事において,発言した劇団員による記事のチェックが「通常」行われないというのは出版を担う企業として異常ではないのか.これまで,本人の意図とニュアンスが異なる原稿のままで出版したことや,それによる劇団員からの苦情などはなかったのだろうか.



故人を心身ともに深く傷つけた「ヘアアイロン(コテ)」や怪我を想起させる「絆創膏」に明確に言及した発言者(ヘアアイロン事件行為者),


発言の中から敢えて「ヘアアイロン」や「絆創膏」を抽出し,何故か(笑)まで付けた担当部門,


本記事の出版後も,インタビュー内容の問題点に気づかず,2月末に遺族側に指摘されるまで,謝罪や適切な対応を取らなかった宝塚歌劇団と宝塚クリエイティブアーツ,

(出版後,本記事は直ぐにネット上で批判された.その批判にすら気づかなかったのか…)


結論として,本記事に関わった人々皆がおかしい.

「ヘアアイロン事件」も,それについての週刊誌報道も,被害者が受けた苦痛も,劇団内部の人々が誰一人として深刻に考えていなかったからこそ起きた「宝塚グラフ事件」だろう.

この団体の中で,故人が如何にぞんざいな扱いを受けていたかが,ほんの数行のインタビュー記事からも窺える.


改めてご冥福をお祈りいたします.