②宝塚歌劇の機関誌の断捨離

 先日,家の片付けをしながら,宝塚歌劇団の機関誌「歌劇」や「宝塚グラフ 」,公演プログラム,写真集等を整理した.

10年以上分のこれらの書籍は筆者の脳内で記憶していたより膨大な量があり,改めて宝塚歌劇に課金していた金額は決して少なくなかったことを実感した.

機関誌の定期購読はしたことがないと言いながら,2014年〜2016年頃はほぼ毎月「歌劇」,「宝塚グラフ」等を購入していて,自分が重度の“宝塚歌劇依存症”(仮称)であったことを思い知らされる.

結局,宝塚歌劇関連の書籍の大半は処分できず,滅多に使わない本として本棚の奥にしまった.



 宝塚歌劇団宙組劇団員自死事件の遺族側代理人の会見において,代理人弁護士が問題点に挙げた「宝塚グラフ」における“ヘアアイロン事件”の行為者の発言について考えていた.


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 読売新聞によると,発言内容は下記の通り.

 “女性の額にヘアアイロンを当てたとされる上級生を紹介するコーナーの記事で、稽古に携行する物を聞かれた上級生が「ヘアアイロンを持っていこうかな」「絆創膏ばんそうこう など、欲しくなるかもしれないものが 沢山たくさん 入っています(笑)」などと発言。”


 これに対して,遺族側代理人は以下のように主張した.

 “「上級生があえてヘアアイロンや絆創膏のことを持ちだし、最後に『(笑)』などと述べたのは、上級生が被災者(亡くなった女性)に対し、やけどを負わせたことを反省せず、また、被災者を悼む気持ちを持っていないと言わざるを得ない。

そして、上級生の非常識な発言内容を、そのまま劇団の広報誌ともいえる『宝塚グラフ』に掲載した出版社の責任は重大である」”(

「弁護士ドットコムニュース」から引用)



 宝塚クリエイティブアーツは謝罪の意向を示しているようだが,問題になっている発言がどのような経緯で掲載に至ったかの説明も欲しいところだ.

それによって,発言者であるヘアアイロン事件行為者本人にどの程度非があるかが決まるように思える.(ここでは,ヘアアイロンによる傷害行為そのものではなく,行為後の当該発言の是非のみを論点とする)


 筆者個人の経験もふまえると,一般的に発言者(インタビュイー)が発言していない内容を雑誌の編集者が書くことはできない.

そのうえ,編集者がレイアウトした紙面は事前に発言者の校正・確認・了承を取ったうえで出版に至る.


 ただし,上記は一般的で常識的な企業・団体の出版物に関してであり,宝塚クリエイティブアーツがどうであったが気になっている.


 筆者はこれまでにインタビューに答える側(インタビュイー)として公式ホームページやパンフレット等に自身の発言が掲載されたり,自分の書いた物が公の雑誌に掲載されたりしたことが何度かある.

まだ編集する側を経験したことはないが,編集される側の視点から,ホームページが作られ,雑誌が出版されるまでの過程が部分的には分かってきた.

 ※下記について別のケースもご存知でしたらご教示いただけると幸いです.



インタビュー(される側)体験記


⑴インタビュー

 聞き手に話したことを文字起こししたり要約してもらったりする場合もあった.

おそらく一般的にイメージされるインタビュー風景と思う.

 一方で,発言者(インタビュイー)側が,聞き手(編集者)からメールで送られてきた質問に対して回答する場合もあった.

質問への回答には字数制限などがあり,それに沿った形で回答する.

この場合は記事に掲載してもらいたい内容を発言者が記入して編集者に送る.


⑵ 編集者による編集(現場は見ていないため想像です)

 紙面のレイアウト等を決定して,インタビュー内容も載せる.


⑶ 発言者本人による校正

 大方紙面のレイアウトや文章が仕上がった段階で発言者による確認を頼まれる.

勿論,この校正の段階で文章中の表記やニュアンスに問題のある箇所は編集者に指摘し修正を求めることができる.

文章だけでなく,著作権的にそのまま載せてはいけない図が紛れていたこともあり,校正段階でその図を加工または削除してもらうように依頼したこともある.

 この段階がこれまで必ずあった理由は,単に出版前に多くの人の目を通したいからだけでなく,何よりも「発言していない内容が書かれている」などと発言者に出版後に指摘されないようにするためだと思われる.


⑷ 編集者による修正(現場は見ていないため想像です)

 そして,発言者の校正・確認・了承を経て,前段階で指摘された箇所が妥当と判断されたら修正される.


⑸ 出版

 出版後の雑誌や公開後のホームページのデータは発言者にも共有され,発言者も最終的な完成版の記事を直ぐに確認できる.



 以上を踏まえると,“「宝塚グラフ」非常識発言事件”(仮称)への疑問点は

⑴ インタビュー形式

⑶ 発言者本人による記事の校正の有無

 発言者が編集者に内容の修正を依頼できる環境だったか.

⑸ 出版後の記事を発言者が確認したか.


 上記の疑問が詳らかにならない限り,「上級生(発言者)が被災者に対し、やけどを負わせたことを反省せず、また、被災者を悼む気持ちを持っていないと言わざるを得ない。」との遺族側の主張を当該発言者は否定することはできないだろう.