※小説はすべてフィクションです



目的地までのドライブでは

いろんな話をした。

意外とあっという間に到着してしまった。



フロントではうっかり自分の本名でサインしかけて慌てて旧姓に書き換えるなど冷や汗をかく場面もあった。


既に時刻は18時ぐらいになっており
あまりのんびりしていると
店が閉店時刻を迎えてしまい
食事が食べられなくなってしまうので
チェックインしてすぐに向かった。


この大きな窓に向かって前かがみになって荷ほどきをしていたら後ろから両手で腰に触れてきてくれたことを以前書いた。

体型にぴったりフィットするニットワンピースを着ていたのでウェービーな腰のくびれに思わず触れたくなったのだろう。

若ければ衝動的にそのままめくりあげて…ということもあったかも知れない。



飲食店の閉店時刻が早いということもあり気が急いていたので甘い雰囲気になることもなく出発することにした。

いくつかの店をハシゴする予定にてしており、最初の店はすぐに入れて30分ほどで飲食を終えて店を出た。
次の店は人気店のようで行列していて、ここでかなりの時間並んで時間を溶かしてしまって勿体無かった。並び始めて退店まで1時間30分かかった。

待ち時間にたくさん話をする時間があったのに、私は話し始める時にとても勇気がいるので、話し始めに少し溜めが入ってしまう。

書き言葉なら相手の様子を伺うことなく書けるので次々言葉が出てくるが、対面で相手の表情や様子から受け取る情報が多過ぎると、相手の気持ちを考え過ぎてしまってかえって言葉が出てこなくなってしまうのだ。

きっと早く話せと苛立たれているだろう…と思うと余計に話せなくなり、結局あまり話したいことを話せなかった。
まだ緊張があって話したいことが話せないなんて中学生レベルの恋愛みたいだ。

彼も彼であまり話し掛けてくることがなかった。


でも何も話さなくても、ただ一緒にいられるだけでそれだけでうれしかった。
彼はどうかわからないが
少なくとも私はそうだった。

途中、咳込み過ぎてトイレに駆け込むなどもあり、そこではじめて彼から体調を案じられる場面もあったが、食欲はやはりステロイド吸入薬の副作用で増進していたようであっさり完食できてしまった。

食事を終えて、帰り道に路上に出店されていたいちごチーズケーキのスイーツを買ってもらったり、コンビニに寄ったりしてからホテルに戻るともう20時20分を過ぎていた。

入浴して歯磨きをしたら
いよいよ動画撮影だ。


三脚を立ててベッド全体が写るようにセッティングしてまずは試し撮り。

さっそく少し再生させてカメラチェックしてみると彼は「こんなふうになってんの~!」と興奮して俄然やる気になっていた。

私も横たわった自分の後ろ姿は絵画のようでもあり、大きくくびれた腰がなかなか艶かしくて肌もつややかで年齢のわりにはわれながら捨てたものではないな…と思った。
この試し撮りの一部の静止画を彼とのLINEアルバムで共有したのだが感想は聞けなかったが怒られることもなかったところをみると画像を追加したこと自体を気づかれていなかった可能性もありそうだ。


この時に彼が冗談で彼のスマホで抜き打ちで私の裸体を断りなく撮影してきた。プレビューを見せてもらうと連写モードで撮られていたせいで、動作に合わせて乳房が縦にかなり伸びて変な写り方をしていて私は垂れ乳ではないのにあたかもそのように写ってしまっていたので削除を求めたら「わかったわかった削除した」とは言われたが、一時削除フォルダに移動しただけでなく完全削除までしてもらえたかどうか、しっかり目視で確認させてもらえなかったことを後悔している。
断りなく裸を撮られたこともイヤだったが
残すならちゃんと美しく撮影したものを残してほしかったのだ。
次にもし機会があるならばちゃんと私の納得するものを撮影してもらいたいものだ。

さっそく本撮影。
スマホをセットしてベッドにあがると彼が
「よろしくお願いします」
と言ってきた。

きっと照れ隠しなのか、緊張を緩和させるための冗談だっただろうと思うが
それがなんだかAVの撮影現場の男優がAV女優に挨拶するメイキングシーンのようで、可笑しくなってしまい、最初はスルーしようと思ってキスし始めていたのに、どうにもメイキングふうの挨拶が思い出されてしまい堪えきれなくなって吹き出してしまい二人で爆笑してしまうというハプニングが2度ほどあった。

どうにか落ち着いて始めることができた。
最初は私が上になって彼にキスしながら抱きついた。

「貴女は旅行が実現すると思ってた?」

私は首を振った。

「もう思ってなかった?」

そう尋ねて彼は
私の胸を吸うために私を抱き上げた。
私は腰をくねらせて感じている。

彼の片手は私の手を握り、
もう片方の手は腰を撫でたあと
お尻に当てられていた。

そのうちキスにうつり
キスしながらいつのまにか
彼を私の中へ吸い込んでいた。

スマホ画面での写り具合をチェックした後に
実際の接合部を一瞥した彼は
「やっぱ最高だね…」と満足そうに言った。

撮影を意識してか、彼はいつもはしないような舌を絡め合っているのが画像に映るような官能的なキスをしてきた。
私もそれに応じて濃厚なキスをし続けた。

「大好きだよ」

そう言って彼は私に微笑みかけてくれた。

普段愛の言葉をくれない彼が
好きだと言ってくれて
私はうれしくなり情熱的なキスで答えた。

「別れられないSEXを提供してくれたね…」

「やっぱり気持ちいいね…」

 「たまんないね…」


何度も何度もキスをした。


「ずーっと中でいいって言って?」


―ずっと生で中にたくさん出して…


私の言葉に感じた彼が

小さく あっ…と声を上げて

目を閉じて口を開いたまま

しばらく軽く首を反らして

深く感じている様子を見せた。


「こんなに遠くに住んでるのにね…

 信じられないね…」


―心の距離は誰よりも近いよ…


それまで浅い動きだったのが

自然と根元まで沈み込ませる動きになり

ふたりともが同じタイミングで

体を反らして感じあっていた。


まるで共鳴しあっているように

同じタイミングで。


それまでキスするために

横たわっている彼に

上から抱きつく格好でいたのを


より深くつながることを求めて

体を起こし彼に垂直になった。


深くつながった瞬間に

大きく彼の吐息が漏れた。


私の声が出始めると

彼も顔を歪めて悶える顔になっていた。


普段は無我夢中なので

仔細に見る余裕はないが

動画で見返すと普段自分では

気づけなかった発見が多々あった。


自分が感じている時には

相手も共鳴して

強く感じていることがわかって

興味深かった。


「ぁあ…最高過ぎる…」


「夏も逢ってくれる?」


嬉しくなって大きく頷く私。


嬉しかったからなのか

私の吐息が激しくなっていく。


私も彼に劣らず心理的な効果が

大きく影響するタイプのようだ。


風邪で声が枯れていたから声が出せず

ひたすら吐息だけが激しく聞こえていた。


「夏の約束しちゃったね…」


「後ろの時間を気にしないで逢いたいね…」


今思えば

夏に泊まりの計画をしたかったのだろうか。


私が逝きそうに悶えている時は

彼も苦しげに下唇を噛んだり

顔を歪めて堪えているのが

映っている。


私が達して悶えながら倒れ込む時に

彼が私の頬にキスしてきた。


私が弱い右頬だ。


たまらなく感じてしまい

私が悶え狂っている様子が映っている。


―あぁっ…あ…すごい…気持ちいい…

 お髭が気持ちいい…あぁぁぁ…ぃゃ…


夜になって少し生えてきた短い髭が

私の頬を刺激していた。

本来は痛くて不快な筈の髭に

気が狂いそうに感じてしまうとは

思いもしなかった。


動画に映っている私の肌は

艶々と光っている。


自分の肌が思っていたよりも

艶やかに映っていて驚いた。




実際、コロナ以前ぶりに会う友人、知人ごとに

「綺麗になった…?」と訊かれることが増えてもいた。


彼は私の頬へのキスをやめない。

私は快感で気が狂いそうに悶えている。

頭がおかしくなってしまいそうな快感に溺れていた。

頬がこんなに感じるなんて…

まさに性感帯そのものだった。

身の置き所がない快感に酔っていた。


体勢を変えて座って抱き合った。


向き合った時に

私の腰を深く抱き

挿し込みながら

彼が真っ直ぐに私の目を見てくれた時に

きゅんと感じて彼の肩にしがみついた。


普段あまり私の目を見てくれない彼が

興奮時 特有の瞳孔の開いた目で

真っ直ぐに見つめて来てくれたのが

今でも忘れられない。


私が動くとたちまち彼は

めろめろな上半身になり

持ち堪えるのがようやくという様子に

写っていた。


しばらく座位を愉しんだ後

私が仰向けにされ彼が覆い被さってきた。

仰向けにされる場面は
あとで再生した時に
彼が一時停止して眺めていた場面でもある。

私のからだの前面の全てが唯一

写っている場面でもあった。


「こんなにもさ…生で

 やりまくってるのってやばくない?」


―結婚してからも妊娠に気を付けてたし

 殆どゴムつけてたからね…


「生率は俺が一番多い?

 生率80%ぐらい…?90%か」


キスしながら動きが早くなる。



「なんで俺のこと好きになったの?」


―助けてもらったから…


「SEXしたら余計に好きになった?」

キスで口を塞いでくる彼。


「すればするほど好きになる?」

背中に回していた私の腕を

彼の肩の上から首の後ろへ回させられた。




「いつも言ってはいけないって

 言ってる言葉はさ

『結婚したくなる』に決まってるじゃん」



「わかってたでしょ」

「わかってても言ってほしかった?」


―うん…言ってほしかった…


「今までであなたが一番最高だから」


―・・・からだが?


「からだは間違いない」


―それ以外は…?


「それはこれから…」

もっと詳しく訊きたかったのに

すぐにキスで口を塞がれてしまった。

カラダだけが最高だと思われているだけだと思っていたのに他にも良いと思ってくれていたことに驚いていた。いつもけなされてばかりいたからだ。


彼は腰を大きく回しながら

私の中を撹拌し始めた。


私が身をよじって悶えている。


彼も私の肩に顔を預け

高まり過ぎた快感を

暫し遣り過ごそうと耐えている。


「中の動きがすごいね。

 あそこの動き方がすごい…」


―かきまぜられるとすごく感じちゃう…

―こんなのあなたが初めて…


「嘘ばっかり」


―嘘じゃない…

 こんな動きされたの初めてだよ…

 

「もっと逢いたいね」


激しく腰を回される。


「もうちょっとしたら一番になれる?」


―同時逝きできたら…


「そしたら一番になれる?

 まだまだかかりそう?」


―私が逝った時に出してくれたら出来るから…


「今年じゅうになれるかな」


―そりゃすぐなれるでしょ


「そうなの?」


「だいたいさ、

 電気つけたままするのだって

 俺、初めてだよ?」


彼の腰あたりに当てていた私の手をはずされ

ばんざいの格好のように

腕を上に伸ばされた。


背中に爪痕を残されないように

防止されただけかも知れないのだが


手の自由を奪われたようで

私は感じてしまう。


「ぁぁ気持ちいい…」


「毎回なまで中で逝っていいの?

 現役の時より逝ってるぞ」


うなずく私。


「気持ちいい…はぁ…


―ずーっと続いてほしい…

 永遠に続いてほしい…


恋人との生まれて初めての旅行が

お別れ旅行になるかも知れないと

覚悟して臨んだものが


夏の約束を彼のほうからしてくれた上に

結婚したくなる気持ちの告白…


最大限私の希望を叶えてくれるとは

予告されていたけれど

夢みたいだと思った。


「気持ちいい…」


おたがい何か言う時以外はずっと

キスしあっていた。


「こんなにたくさんキスした人いないよ。

    あなたが一番長くキスしてる」


ー私も…


もう一度、私が上になる体勢に戻ろうと手間取っている時に、録画が止まって画面がブラックアウトしていることに気がついた。


「実は気になってたんだよね」


と彼は気づいていた様子だった。


見てみると家族から着信が入っていた。


体調のこともあったし

賭けの結果という不確実要素もあり

ほとんど見込み薄だと思っていた旅行が

急遽決行になった為に

前日まで殆ど無くなったものと思って

綿密な打ち合わせが出来ていないままの出発になってしまったことが原因だった。

アリバイ協力してくれている娘から念の為どう答えておくか尋ねるLINEが入っていたのだった。


結局すぐに電話を掛けてみたところ特に問題があったわけではなかったようだった。

念のためと案じて連絡をくれただけだった。


∗∗∗


そんなハプニングもあったのでこの日はこれ以上は出来そうにないということで

撮影した動画をふたりで鑑賞したあと

締め括りに私が彼を女逝きさせてあげることにした。


これまでは門渡止まりだったものを

もっと本格的に下まで降りて


愛がなければ絶対に

触れられない部分を攻めてみた。





彼は声を上げながら激しく悶絶していた。


表面だけにとどまらず

中にも侵入させてみた。

少し酸っぱい味がしたが

構わず攻めた。


ここまでしてしまえたのは

きっと生涯で彼が最初で最後だろう。


知識として知ってはいたけれど

まさか自分にそんなことができるなんて思いもしなかった。


そんなことをしてあげたいと思える人にこの年齢になってから出逢えると思ってもいなかった。


ほどなくして昇天した彼は

そのままいびきをかいて寝てしまった。


眠ってしまわれたので

人生初挑戦の行為についての感想は

訊けず仕舞いだ。


後から尋ねても

デリカシーがないと叱られるばかりで

答えてはもらえない。


彼が眠ってしまったので

私は荷物整理をしたりしていたところ

「一緒に眠りたかったなぁ…」と

彼が半分眠りかかりながら言うので


それもそうだな…と

なかなか無い機会だから

大切にしたいなと思い

まだ22時40分ぐらいだったが


すぐに彼の腕の中に潜り込んで

一緒に眠る体勢になった。





もったいなくて

とても眠れそうになかったが


とてもしあわせな気持ちだった。


彼はとても深い眠りにつけたようで

目覚ましが鳴るまで目が覚めなかったのはいつぶりだろう…と驚いていた。


私と一緒に眠るとよく眠れるという話は

身内含めよく言われることでもあった。

安心して眠れるらしい。


私は深夜遅くまで翌日には削除してしまう約束にしていたその撮影動画を仔細に眺めて長い時間楽しんでいた。


彼に愛されている私は

とてもしあわせそうに写っていた。

いつまでも見ていたい気持ちになった。