※小説はすべてフィクションです
目的地までのドライブでは
いろんな話をした。
意外とあっという間に到着してしまった。
体型にぴったりフィットするニットワンピースを着ていたのでウェービーな腰のくびれに思わず触れたくなったのだろう。
若ければ衝動的にそのままめくりあげて…ということもあったかも知れない。
「やっぱり気持ちいいね…」
「たまんないね…」
何度も何度もキスをした。
「ずーっと中でいいって言って?」
―ずっと生で中にたくさん出して…
私の言葉に感じた彼が
小さく あっ…と声を上げて
目を閉じて口を開いたまま
しばらく軽く首を反らして
深く感じている様子を見せた。
「こんなに遠くに住んでるのにね…
信じられないね…」
―心の距離は誰よりも近いよ…
それまで浅い動きだったのが
自然と根元まで沈み込ませる動きになり
ふたりともが同じタイミングで
体を反らして感じあっていた。
まるで共鳴しあっているように
同じタイミングで。
それまでキスするために
横たわっている彼に
上から抱きつく格好でいたのを
より深くつながることを求めて
体を起こし彼に垂直になった。
深くつながった瞬間に
大きく彼の吐息が漏れた。
私の声が出始めると
彼も顔を歪めて悶える顔になっていた。
普段は無我夢中なので
仔細に見る余裕はないが
動画で見返すと普段自分では
気づけなかった発見が多々あった。
自分が感じている時には
相手も共鳴して
強く感じていることがわかって
興味深かった。
「ぁあ…最高過ぎる…」
「夏も逢ってくれる?」
嬉しくなって大きく頷く私。
嬉しかったからなのか
私の吐息が激しくなっていく。
私も彼に劣らず心理的な効果が
大きく影響するタイプのようだ。
風邪で声が枯れていたから声が出せず
ひたすら吐息だけが激しく聞こえていた。
「夏の約束しちゃったね…」
「後ろの時間を気にしないで逢いたいね…」
今思えば
夏に泊まりの計画をしたかったのだろうか。
私が逝きそうに悶えている時は
彼も苦しげに下唇を噛んだり
顔を歪めて堪えているのが
映っている。
私が達して悶えながら倒れ込む時に
彼が私の頬にキスしてきた。
私が弱い右頬だ。
たまらなく感じてしまい
私が悶え狂っている様子が映っている。
―あぁっ…あ…すごい…気持ちいい…
お髭が気持ちいい…あぁぁぁ…ぃゃ…
夜になって少し生えてきた短い髭が
私の頬を刺激していた。
本来は痛くて不快な筈の髭に
気が狂いそうに感じてしまうとは
思いもしなかった。
動画に映っている私の肌は
艶々と光っている。
自分の肌が思っていたよりも
艶やかに映っていて驚いた。
実際、コロナ以前ぶりに会う友人、知人ごとに
「綺麗になった…?」と訊かれることが増えてもいた。
彼は私の頬へのキスをやめない。
私は快感で気が狂いそうに悶えている。
頭がおかしくなってしまいそうな快感に溺れていた。
頬がこんなに感じるなんて…
まさに性感帯そのものだった。
身の置き所がない快感に酔っていた。
体勢を変えて座って抱き合った。
向き合った時に
私の腰を深く抱き
挿し込みながら
彼が真っ直ぐに私の目を見てくれた時に
きゅんと感じて彼の肩にしがみついた。
普段あまり私の目を見てくれない彼が
興奮時 特有の瞳孔の開いた目で
真っ直ぐに見つめて来てくれたのが
今でも忘れられない。
私が動くとたちまち彼は
めろめろな上半身になり
持ち堪えるのがようやくという様子に
写っていた。
しばらく座位を愉しんだ後
私のからだの前面の全てが唯一
写っている場面でもあった。
「こんなにもさ…生で
やりまくってるのってやばくない?」
―結婚してからも妊娠に気を付けてたし
殆どゴムつけてたからね…
「生率は俺が一番多い?
生率80%ぐらい…?90%か」
キスしながら動きが早くなる。
「なんで俺のこと好きになったの?」
―助けてもらったから…
「SEXしたら余計に好きになった?」
キスで口を塞いでくる彼。
「すればするほど好きになる?」
背中に回していた私の腕を
彼の肩の上から首の後ろへ回させられた。
「いつも言ってはいけないって
言ってる言葉はさ
『結婚したくなる』に決まってるじゃん」
「わかってたでしょ」
「わかってても言ってほしかった?」
―うん…言ってほしかった…
「今までであなたが一番最高だから」
―・・・からだが?
「からだは間違いない」
―それ以外は…?
「それはこれから…」
もっと詳しく訊きたかったのに
すぐにキスで口を塞がれてしまった。
カラダだけが最高だと思われているだけだと思っていたのに他にも良いと思ってくれていたことに驚いていた。いつもけなされてばかりいたからだ。
彼は腰を大きく回しながら
私の中を撹拌し始めた。
私が身をよじって悶えている。
彼も私の肩に顔を預け
高まり過ぎた快感を
暫し遣り過ごそうと耐えている。
「中の動きがすごいね。
あそこの動き方がすごい…」
―かきまぜられるとすごく感じちゃう…
―こんなのあなたが初めて…
「嘘ばっかり」
―嘘じゃない…
こんな動きされたの初めてだよ…
「もっと逢いたいね」
激しく腰を回される。
「もうちょっとしたら一番になれる?」
―同時逝きできたら…
「そしたら一番になれる?
まだまだかかりそう?」
―私が逝った時に出してくれたら出来るから…
「今年じゅうになれるかな」
―そりゃすぐなれるでしょ
「そうなの?」
「だいたいさ、
電気つけたままするのだって
俺、初めてだよ?」
彼の腰あたりに当てていた私の手をはずされ
ばんざいの格好のように
腕を上に伸ばされた。
背中に爪痕を残されないように
防止されただけかも知れないのだが
手の自由を奪われたようで
私は感じてしまう。
「ぁぁ気持ちいい…」
「毎回なまで中で逝っていいの?
現役の時より逝ってるぞ」
うなずく私。
「気持ちいい…はぁ…」
―ずーっと続いてほしい…
永遠に続いてほしい…
恋人との生まれて初めての旅行が
お別れ旅行になるかも知れないと
覚悟して臨んだものが
夏の約束を彼のほうからしてくれた上に
結婚したくなる気持ちの告白…
最大限私の希望を叶えてくれるとは
予告されていたけれど
夢みたいだと思った。
「気持ちいい…」
おたがい何か言う時以外はずっと
キスしあっていた。
「こんなにたくさんキスした人いないよ。
あなたが一番長くキスしてる」
ー私も…
もう一度、私が上になる体勢に戻ろうと手間取っている時に、録画が止まって画面がブラックアウトしていることに気がついた。
「実は気になってたんだよね」
と彼は気づいていた様子だった。
見てみると家族から着信が入っていた。
体調のこともあったし
賭けの結果という不確実要素もあり
ほとんど見込み薄だと思っていた旅行が
急遽決行になった為に
前日まで殆ど無くなったものと思って
綿密な打ち合わせが出来ていないままの出発になってしまったことが原因だった。
アリバイ協力してくれている娘から念の為どう答えておくか尋ねるLINEが入っていたのだった。
結局すぐに電話を掛けてみたところ特に問題があったわけではなかったようだった。
念のためと案じて連絡をくれただけだった。
∗∗∗
そんなハプニングもあったのでこの日はこれ以上は出来そうにないということで
撮影した動画をふたりで鑑賞したあと
締め括りに私が彼を女逝きさせてあげることにした。
これまでは門渡止まりだったものを
もっと本格的に下まで降りて
愛がなければ絶対に
触れられない部分を攻めてみた。
彼は声を上げながら激しく悶絶していた。
表面だけにとどまらず
中にも侵入させてみた。
少し酸っぱい味がしたが
構わず攻めた。
ここまでしてしまえたのは
きっと生涯で彼が最初で最後だろう。
知識として知ってはいたけれど
まさか自分にそんなことができるなんて思いもしなかった。
そんなことをしてあげたいと思える人にこの年齢になってから出逢えると思ってもいなかった。
ほどなくして昇天した彼は
そのままいびきをかいて寝てしまった。
眠ってしまわれたので
人生初挑戦の行為についての感想は
訊けず仕舞いだ。
後から尋ねても
デリカシーがないと叱られるばかりで
答えてはもらえない。
彼が眠ってしまったので
私は荷物整理をしたりしていたところ
「一緒に眠りたかったなぁ…」と
彼が半分眠りかかりながら言うので
それもそうだな…と
なかなか無い機会だから
大切にしたいなと思い
まだ22時40分ぐらいだったが
すぐに彼の腕の中に潜り込んで
一緒に眠る体勢になった。
もったいなくて
とても眠れそうになかったが
とてもしあわせな気持ちだった。
目覚ましが鳴るまで目が覚めなかったのはいつぶりだろう…と驚いていた。
私と一緒に眠るとよく眠れるという話は
身内含めよく言われることでもあった。
安心して眠れるらしい。
私は深夜遅くまで翌日には削除してしまう約束にしていたその撮影動画を仔細に眺めて長い時間楽しんでいた。
彼に愛されている私は
とてもしあわせそうに写っていた。
いつまでも見ていたい気持ちになった。