今回は、いつもと異なり、仕事もひと段落して、少し暇になったので、お茶とお菓子を食べながら思いついた物語を仕事の合間に(サボって)綴ってみましたので、少しの間、お付き合い願います。

【ありがとう・・・】

 最近、事故物件と言われる部屋が世間に知れ渡る前から、家賃が相場よりも安い為、住み続けている古い友人がおり、趣味で描いている水彩画を旅先から、はがきを送ってくれています。

 

 そんな彼が実家を出て一人暮らしを始め、家賃が相場より安い部屋に暮らし始めましたが、家賃が安い物件には様々な理由がある為、注意しようと思いましたが、彼曰く、生まれてから一度も不思議な物や体験をしたことが無いので、「かりに不思議な事があっても全く気にしない」と豪快に笑っており、相場よりも家賃の安い物件に大変満足していたようなので、しばらく様子を見る事にいたしました。

 

 引っ越し荷物も片付いた頃、友人から連絡があり新居に遊びに行く事となりました。

 

 残暑の厳しい午後の日差しの中、最寄りの駅まで、迎えに来てもらい、途中のスーパーで飲み物等を買い出した後、彼の部屋へと向かいました。

 

 玄関を入ると、ワンルームの部屋は、整理整頓されており、大雑把な性格の彼にしては、とても清潔感のある感じがしました。(女性と暮らしているような雰囲気!)

 

 乾杯後、昔話などをしていると時間のたつのが早く、夕方の西日が大きな窓から差し込む時刻になり、飲み物も少なくなってきたこと理由に、彼が追加の飲み物を買いに行くと言って、部屋から出ていきました。

 

 一人残された部屋で、夕暮れのそよ風に揺れる、窓のカーテンを何気なく眺めていると、いつの間にか、カーテンの向こう側に、長い黒髪を後ろで縛った、清楚な感じがする顔立ちの整った若い女性がおりました。

 

私は、彼とは異なり、子供の頃より見えないものが見える体質らしく、様々な場所でこの世のも出ないものが、見えたり感じたりする事が<多々あります。

 

 今回も、見えないものが見えてしまったのだと、半ばあきらめて、しばらく彼女を観察した所、悪いものでは、無いように感じましたので、ゆっくりとした口調で、友人の事を気に入り、彼のそばに居たいのか聞いてみると、静かにうなずき、彼の事を守ってあげてくれることを約束してくれるなら、何も伝えずに見守ってあげると伝えると、無表情だった彼女が、少し優しい笑顔でうなずくのを感じました。

 

 暫くすると、買い物から戻った友人が玄関より入って来た為、友人の方へ視線を移し、再び彼女の方へ視線を戻すと、先程迄の姿はなく、そよ風にカーテンがなびいているだけでした。

 

 小一時間程、彼と話した後、明日早くから仕事がある事を理由に、お暇することし、玄関を出る際、心の中で、彼の事をよろしく頼み、駅へ向かいました。

 

 後日、旅先から水彩画のはがきが友人より届き、その中に先日、長い髪をなびかせて幸せそうな彼の部屋で見かけた彼女の笑顔が描いてあり、「ありがとう」と言っているような感じがしたので、「どういたしまして」と、心の中でつぶやきました。

 

 暫くして、手紙の整理をしている時に、ふと友人の事を思い出し、はがきを取出して見ると、彼女の姿は、消えており、旅先の風景のみが描かれておりました。

 

 現在も彼は、格安家賃の部屋で、元気に暮らしている様なので、私との約束は守られているのだと、確信しています。

幽霊を信じるor信じない

 

 

 

 

 

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