【東京亀戸の船橋屋・くずもち】
「くず餅」というお菓子は、関東の方と関西の方では、全く異なる形状を認識される不思議な、お菓子ですね。
関西では、葛粉を原料とした透明感のある餅をさし、関東では、小麦澱粉を乳酸発酵させたものを蒸し上げて作る白くて弾力のある餅で、「和菓子で唯一の発酵食品」です。
私は、関東の生まれなので、子供のころから、小麦粉を乳酸発酵させたものを「くず餅」として、食べておりました。(おなかの調子が良くなるそうです)
関東でいう「くずも餅」の歴史は古く、江戸時代の文化2年(1805年)、十一代将軍徳川家斉の頃に東京都江東区、亀戸天神社のすぐ近くで、創業したという歴史ある老舗『船橋屋』の看板商品は『元祖くず餅』です。
関東のくず餅の起源には諸説あり、亀戸天神のほか、池上本門寺(東京都大田区)や川崎大師(神奈川県川崎市)の門前町でも名物になっているそうで、元祖といわれるお店の一つがこの『船橋屋』です。
船橋屋の初代は、亀戸天神が梅や藤の季節に参拝客で賑わうのを見て、ここで甘味を出したら売れると見込み、湯で練った小麦澱粉を「せいろ」で蒸し、「黒蜜ときな粉」をかけた餅を作り上げて売り始めたところ、評判となり、江戸の名物となりました。
初代の出身地は当時良質な小麦の産地だったという下総国(千葉県北部)の船橋で、生産地が以前「下総国葛飾郡」という地名だったことから、葛飾郡の「葛(くず)」を取って「葛餅」と呼ばれるようになったといわれています。
その後葛粉を使った関西の「葛餅」と分けるため、関東では「くず餅」や、お店よっては「久寿餅」と表記されるようになったそうです。
小麦澱粉はグルテンを取り除き、450日もの期間じっくりと乳酸菌で熟成発酵させる、無添加発酵製法で作られている、和菓子では珍しい発酵食品です。
普通の餅とは異なる粘り控えめの独特なモチモチ感のある本体に香ばしい、「きな粉」と余るくらい量がたっぷりの「黒蜜」をしっかり絡め濃厚ながら甘さは上品な味わいです。
三国志や水滸伝ほか時代小説で有名な吉川英治が、直執看板を書くほど、船橋屋をひいきにしており、現在でも本店では、展示されていますので、ご覧になってみては、如何でしょうか?
たまには、子供たちと共に、関東と関西のくずもちを食べ比べ、楽しみながら食文化の違いを学ぶことで、記憶に残る食育をして、日本の文化を次の世代へ伝える事も、大人の仕事かもしれませんね。