【鹿児島の醤油が甘い訳】
鹿児島旅行で食事をした時に多くの人が甘い醤油に戸惑いを覚えると思います。
甘い醤油なんて!と思われると思いますが、暫く食べ進めると刺身なども不思議と美味しく感じられるという現象が発生いたします。
九州地方(福岡・佐賀・熊本・鹿児島)の醤油が甘いことは、一般的によく知られておりますが、その理由についてあまり語られておりません。特に鹿児島の醤油が甘い背景には、砂糖の存在、そして薩摩藩と琉球(沖縄)や奄美の歴史が関係している様です。
鹿児島の甘い醤油は、奇をてらった訳では、無く長い時間をかけて育て上げて来た、地域の歴史に基づいた日常的な味なのです。鹿児島の甘い醤油を紐解きますと、避けて通れないのが砂糖の存在が大きく関係しております。戦国時代より薩摩藩は琉球(沖縄)や奄美大島を支配下に置き、サトウキビ栽培を強く推し進めていました。当時の砂糖は、非常に高価な産物で、薩摩藩にとっては重要な財源であり、琉球や奄美で生産された砂糖は、年貢として厳しく取り立てられ、藩の経済を支える柱となっていました。(厳しい年貢の取り立ては、砂糖地獄と言われていました)
その結果、薩摩では他の地域に比べ、砂糖が比較的身近な存在でしたが、贅沢品であった為、誰もが気軽に使えた訳でありませんでした。それでも、砂糖が「特別なもの」から「使いどころを選べば使えるもの」へと少しずつ位置を変え、庶民にも手が届く存在でした。この環境が、味付けにも影響を与へた様で、煮物や揚げ物、そして醤油にまで、甘さが自然に入り込んでいったようです。鹿児島の甘い醤油は、突然生まれた味では無く、琉球や奄美の畑で育ったサトウキビと、薩摩藩の政策、そして人々の暮らしが重なり合った末に、長い時間を掛けて育った歴史ある味なのです。
琉球(沖縄)と奄美は、同じ薩摩藩の支配を受けておりましたが、奄美の醤油が甘いのに対して沖縄の醤油は、不思議と甘くないのは、沖縄が琉球王国として、独自の政治と交易の歴史を歩んできた為、中国との交流が深く、食文化も中国の影響を受けていましたので、同じ薩摩藩の支配下であっても歴史的な背景などで醤油の味も変化していったようです。
関東の醤油に比べて鹿児島の醤油が甘いことは、砂糖が豊富であったことの他、温暖な気候のためカロリーを多く消費する為、エネルギー補給の役割や鹿児島では辛口の焼酎が好まれ、甘い味付けの料理が相性も良く、脂身の多い魚が豊富に取れるので、コクのある甘めの醤油が合う事や、煮物などを作る時もこちらの甘い醤油が役に立ちますので、大変重宝されています。
食文化というものは、その土地の歴史や文化に根付いている様なので、皆さんが旅行などで訪れた土地で、地元の料理を頂く事は、味と共に悠久の時を感じる事こそが、本当の贅沢な時間の使いかなのかもしれませんね。
