今夜ご紹介する本は、
アントワーヌ・レリス
土居 佳代子(訳)
「ぼくは君たちを
憎まないことにした」です。
2015年11月13日
パリ同時多発テロ。
劇場にいた妻を失った夫は、
テロリストに手紙を書いた。
それは憎しみを与えないということ。
フェイスブック上で公開されると、
瞬く間に世界中を駆け巡った。
突然母親が不在になった息子を守り、
子育ては何をしても
妻のようにはいかない。
胸にしっかりと焼きつく喪失感。
大人と子供が見ている世界の違い。
時にその違いが
弱った心を救ってくれることもある。
事件から2週間の間に、
息子と共に生きる希望を綴った本書は、
ありふれた日常が
寸断されるところから始まる。
臨場感のある文書と
時系列で進む感じが
ジャーナリストという職業を
感じさせる。
物語の最後は、
息子と一緒に妻のお墓参りに
行くところで終わっている。
当日の天気は穏やかでも、
内心は不安な様子が伝わってくる。
それでも新しい人生に向かって
一歩ずつ進んでゆく。
ささやかな親子の幸せと
息子の成長を願う。