本日(2024年5月10日)衆議院第一議員会館で行われた院内集会と政府への申入れの速報です。
広々とした多目的ホールには、賛同団体・一般市民107人と、基地問題に取り組む超党派の議員13人が参集し、さらにマスコミ関係者9人、全国各地のオンライン視聴者若干名も参加しました。
第1部 院内集会 各地からの報告
午後2時から始まった第一部では、主催者の全国基地爆音訴訟原告団連絡会議代表の挨拶に続いて、各地からの報告が行われました。
当初からオスプレイ配備に反対してきた人々、基地の爆音被害を訴えて行動を起こした市民団体、騒音被害の実態を実証的に訴える研究者、オスプレイの飛行に不安を抱く現地の住民など、様々な立場からの発言が続きました。
そこに共通するのは、当初から危険性や問題点が指摘されながら米軍によっても自衛隊によってもオスプレイの配備が強行され運用が続けられたあげく、昨年(2023年11月29日)またしても重大な事故が起こったことへの不安と不信、そして、事故後の飛行停止が今年(2023年3月)全く納得のいかない形で解除され飛行が再開していることへの強い憤りでした。
ごく一部ではありますが、以下にレポートします。
◆東京・横田基地での飛行状況と被害状況
横田基地周辺に住む住民は、自ら動画を撮影し、自前の騒音計で測った数値を示して、深夜10時過ぎの飛行の実態や、その爆音が90デシベルを超える耐え難さであることも、訴えています。
◆沖縄琉球大学工学部教授による
「米軍普天間飛行場から発生するMV-22オスプレイ騒音に関する調査研究」
2012年10月1日、MV-22オスプレイ12機が配備
CH46の代替ヘリコプターとして、騒音負担の軽減が期待されたが、配備後の騒音測定では、オスプレイの方が大きく、また低周波音では環境省の物的影響の閾値を上回ることがわかった。
さらに「辺野古アセスの環境影響評価書」の心理的影響の閾値も上回る測定結果が出た。
オスプレイに替わったことで、沖縄県民、普天間飛行場周辺の住民にとっての騒音の負担は、倍増したと考えられる。
具体的なデータを図表で示し、また低周波被害の実態を報じる新聞記事などを示しながら、最後に以下のような「まとめ(私案)」が提示されました。
・オスプレイの運用停止の結果、オスプレイの騒音の大きさが再認識された。米海軍運航シス テム・コマンド・プレスリリースから「周辺コミュニティの安全が、引き続き最も重要である」としている以上、少なくとも沖縄のオスプレイ飛行はメンテナンスが不透明であることから飛行は行うべきではないと考える。
・沖縄各地域の小学校および学校施設上空飛行禁止を訴えるために各教育委員会は飛行ルートや騒音事態調査を目的とした騒音計設置およびアンケート調査に取り組む必要がある。
・普天間飛行場所在地の宜野湾市内小・中学校においてオスプレイの低周波音影響のアンケート調査を行い、さらに低周波音影響の分析調査を深めていく必要がある。
普天間からは、幼稚園や小学校で外遊びの予定が変更され、授業が中断される子どもたちの実状が報告されました。
また木更津では、場周経路がもはや空地や農地ではなくなって、商用地や住宅地となっているにもかかわらず、オスプレイがその上空を飛び続ける危険が訴えられました。
◆立川からは、自衛隊監視テント村による報告
第2部 政府申入れと質疑応答
午後3時30分からは、主催団体があらかじめ外務大臣・防衛大臣あてに提出していた申入書「オスプレイの配備撤回を求め、飛行再開に反対する要請」の手交が行われ、その内容および質問事項について、それぞれの省の該当部署の担当者が応答しました。
それに対して全国各地からの訴えや質問が続き、予定時間を延長して午後5時過ぎに閉会となりました。
要請の要点は、以下の3点でした。
1 普天間基地と横田基地に配備されたMV-22オスプレイと横田基地に配備されたCV-22オスプレイの配備を撤回するよう米軍に求めること。また自衛隊の木更津駐屯地に配備されたV-22オスプレイの配備を中止し、佐賀への配備計画も断念すること。
2 日本全国で展開する米軍のオスプレイ(CV-22、MV-22、CMV-22)と自衛隊のV-22オスプレイの飛行を停止させること。
3 1と2の要請を受け入れられずオスプレイの飛行再開を行っている、または行う際は、被害地域となるすべての自治体と被害住民を対象として、屋久島沖墜落事故の原因と再発防止策についての説明会を開催し、住民の納得が得られるまでの飛行を再開させないこと
防衛省からは日米防衛協力課、在日米軍協力課、沖縄協力課、東日本協力課、人材育成課などの担当者が次々と発言しましたが、オスプレイの飛行にあたっては「安全を最優先」、地元の生活環境への「最大限の配慮」、地元の皆さまへの「影響を最小限に」等々の文言がすらすら並べ立てられるばかりで、国会答弁のお手本のような乏しい内容でした。
今回の事故原因については、アメリカとの間で前例のないレベルでの技術情報のやりとりがあったこと、特定の部品の不具合が原因であることは日米間で確認しアメリカ側から詳細な分析内容の説明も受けたが、訴訟や懲戒処分の問題も含まれており国内法上の制限によって対外的には公表できないこと、事故調査委員会による報告書が公表されたら地元自治体に対する説明をするが、事故調査報告書が出るまで1年かかるか2年かかるか不明であること……等々がくり返されました。
当事者からすれば、まさにその報告書が出ないうちに、地元民に説明もないままオスプレイの飛行が再開されたことこそが問題なのです。
事故原因の究明どころか、一部の関係者を訴えたり個人を懲戒処分にしたりするだけで、機体の構造的欠陥等は不問に付されるのではないか、という懸念さえ生じます。
既に65人もの命が失われ、日米間で合意されたはずの最低限の基準(騒音レベルや飛行モード・時間・ルート等々)さえ守れらていない現状では、人間の命と周辺住民の人権とがあまりにも軽視されているとしか思えません。
アメリカでは住宅地上空を飛行してはならないオスプレイが、なぜ日本では、アメリカの常識にも日本の法律にも反して運用可能なのか。国防を担う立場の官僚にその悔しさはないのか。
ジェンダーバランスも配慮されて居並んだ防衛官僚たちは、いずれも檻の中から話しているようで、その表情さえ伺えませんでした。
外務省に至っては、担当者が一人、約束の時間に1時間も遅れて登場した上に、それに対する一言の詫びも大した発言もないまま、申入書を受取っただけでした。
それでも、このような機会がもうけられたことは貴重だったと言えます。
各地からの実情を訴える人々が実体験や実証的データに基づきながら親身に語る話には心動かされ、共感を深めました。
「公僕」とは程遠い国家官僚の態度は、むしろ心動かされてはならじと用意した原稿の枠内から一歩も出ない石のような固さでした。
それは、国防どころか対米従属的政治構造と歪な日米軍事同盟の反映であり、それを突き崩すことは容易ではないということが、あらためて実感できました。
それならばなおのこと、「雨だれ石を穿つ」ごとく、日々延々と声を上げ続けることの意味は大きいといえるでしょう。
当日プログラム
******** オスプレイの配備撤回・運用再開に反対する ********
オスプレイ飛ばすな!
院内集会と政府申し入れ
***** 2024年4月10日(金) 衆議院第1議員会館・多目的ホール *****
― プ ロ グ ラ ム ー
第1部(院内集会) 各地からの報告 【(オ)は,オンライン参加】 …14時~15時
主催者挨拶 全国基地爆音訴訟原告団連絡会議 代表 金子豊貴男
1. 東京・横田基地での飛行状況~やりたい放題/危険な訓練を実施
横田基地の撤去を求める西多摩の会 副代表 高橋美枝子
2. 東京・横田基地における被害状況~過酷な夜間ホバリング訓練の被害
第3次新横田基地公害訴訟原告団 団長 奥 村 博
3. 沖縄・普天間基地~被害を研究者の視点で報告
琉球大学 准教授 渡嘉敷 健
4. 沖縄・普天間基地~爆音訴訟から見えてきた住民の不安を数字から紐解く
第3次普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団 団長 新垣 清涼
5. 沖縄・普天間基地~保護者の不安を掻き立てる/学校生活で子供たちに及ぼす影響
#コドソラ 代表 与那城千恵美(オ)
6. 山口・岩国基地~陸揚げ地点や中継拠点・訓練場所として利用されている
瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク 事務局長 久米 慶典(オ)
7. 千葉・木更津駐屯地~陸自V-22オスプレイの飛行
護憲・原水禁君津,木更津地区実行委員会 武藤美好・原田義康
8. 東京・立川飛行場~木更津V-22の飛来から見えた問題点
立川自衛隊監視テント村 井 上 森
9. 神奈川・厚木基地~厚木基地に飛来するオスプレイの飛行
第五次厚木基地爆音訴訟原告団 副団長 中 坪 清
10.佐賀・佐賀空港~佐賀空港への配備反対のたたかい
オスプレイ配備反対佐賀県連絡会 事務局長 池崎 基子(オ)
11. 全国各地からの声(時間の許す範囲での発言をお願いします)
※ 出席・国会議員挨拶・紹介
第2部 政府申し入れ…………………………………15時30分~16時30分
申し入れ書手交 全国基地爆音訴訟原告団連絡会議 代表 金子豊貴男
1. 政府側回答
2. 質疑応答・その1
3. 全国各地からの訴え
4. 質疑応答・その2 ※記者会見