崩壊寸前の4人家族が、ある大きな屋敷に引っ越してくる。
一家の10代の少女クロエは、家の中に自分たち以外の何かが存在しているように感じられてならなかった。
“それ”は一家が引っ越してくる前からそこにいて、“それ”は人に見られたくない家族の秘密を目撃する。
クロエは母親にも兄も好かれておらず、そんな彼女に“それ”は親近感を抱く。
一家とともに過ごしていくうちに、“それ”は目的を果たすために行動に出る。
若干26歳の初監督・脚本作品でパルムドールを受賞した、
「セックスと嘘とビデオテープ」(1989年)
コロナ禍を預言したような、
「コンテイジョン」(2011年)
などなど、多くの面白い、他には類を見ないような作品も作る、スティーヴン・ソダーバーグ監督作品
しかもホラー映画?
これを見逃す訳にはいかない
上映館も上映回数も少なく、やっとタイミングを合わせて観て来ました
謳い文句は「幽霊目線の一人称映画」
周りは緑豊かな二階建ての立派な空き家
リビングには百年も昔の鏡付きの立派な家具
二階のベッドルームの一つ(後にクロエの部屋)、そのクローゼットにひっそりと佇む?幽霊
幽霊は壁や天井をすり抜けることは出来ないし、そもそも家からも出られない?
広角レンズが映す空間が幽霊の視界のようです
というか、スクリーンに映るものは全て幽霊が見ているものです
空き家に不動産業者が裕福そうな4人家族を案内してきました
二階の窓から彼らを見下ろす幽霊(と私達観客)
母レベッカは、
一目でこの家が気に入り、購入決定
慎重な夫の意見は無視されます
程なく内装屋さんが入り、各部屋のペンキ塗りなんかが始まるのですが、職人の一人がこの部屋には入りたくない、と拒否した
仲間が監督に話しています
一家が引っ越してきました
4人が揃うと、夕食時でさえ雰囲気が悪くなっていく
嫌ぁな家族です
レベッカは息子、兄のタイラーを溺愛しています
二人きりになると、ベタベタし、あなただけを愛してる、と口にします
タイラーが高校のカースト上位にいることが嬉しくて、仲間と一緒に下位の女子をからかいネットに写真を流出させた、そんな下衆な自慢話を嬉しそうに聞いています
娘、妹のクロエは、
オーバードーズで親友を亡くしふさぎ込んでいます
タイラーは妹を「メンヘラ」呼ばわりしています
「お前のせいでカースト上位から落ちたらどうしてくれる?」
彼女は幽霊の存在に最初に気付きました
「親友が来てくれたのかも」
悩めるお父さん、夫、クリス
悩み、その1
レベッカとクリスは同じ会社で働いているようですが、妻は何か不正を働いているらしい
「友達の話なんだが」と下手な前振りをして、弁護士に妻の不正の巻き添えにならないようアドバイスを貰ったようです
悩み、その2
引きこもり気味の娘クロエ、どう扱えばいいのか?
妻は、何もしないのが一番、と言いますが、彼には放置にしかみえません
娘を気にかけ、そっと部屋を覗いてみます
悩み、その3
調子に乗ってる息子タイラーを何とかしたい
彼の自慢話にも、妹に優しくないその態度にもウンザリしています
幽霊は、まずクロエに自分の存在を明かします
本を動かし、クローゼットの棚を落とし、彼女の顔にそっと息を吹きかけます
そして、タイラーの女の子を笑い者にした自慢話に怒り沸騰
幽霊は、リビングから二階のタイラーの部屋へ駆け込むと、部屋の中をメチャクチャにしました
家族全員が「何かが居る」ことを思い知らされます
裏口から夜のポーチに出て、ヒソヒソ相談を始める一家
キッチンの窓越しにその様子を眺める幽霊
不動産業者に連絡すると、そんな事故物件では無い、と否定され、知り合いの霊能力者(普通の主婦)を紹介されました
家を訪れた彼女は、何かは、自分のこともいつからここに居るのかも分からない存在、とだけ教えてくれました
恐ろしいものでは無いのでしょう
結局、一家は逃げ出しません
クロエにしてみれば、親友が来てくれた、ですし
さて、タイラーのクラスメイト、ライアンと、
クロエがコッソリ付き合い始めました
家族の留守にクロエのベッドでSEXする二人
クローゼットの扉越しにそれを見つめる幽霊
優しく自信の無さそうなライアンには秘密があって・・・
ネタバレは無理です
あのラストの衝撃を、上手に表現する力量は自分にはありません
是非とも劇場へ、もしくは配信までお待ち下さい
最後に、
何故アジア系の家族なんでしょう?
多分、普通にしていたら、アメリカでは一番下の人種?
だから、レベッカは会社で不正をしてでも自分の地位を守りたい
カースト上位にいるために頑張る(悪さでも)タイラーは誇らしいし、兄の足を引っ張りかねないクロエは疎ましい
当然、白人の夫のクリスもそれは分かっているのでしょう
だから妻にも息子にも強く注意出来ない
所謂、ホラー映画を楽しもうと思った方は肩透かしをくった感じでしょうが、
幽霊が移動する時の独特な浮遊感が漂うような映像と驚きのラスト、おお幽霊の正体はその人か、となるどんでん返し
私には本当に面白かったのです
まあ、本当にホラーになるのは、映画が終わった後
ああ、こりゃあ残された一家はバラバラだろうな、と勝手に思っています
本作を観た方には、この感想、ご理解頂けると思います
如何でしょう?