文藝春秋社が発行していた雑誌「マルコポーロ」

その1995年2月号(1月17日発売)を買った覚えがあります

 

多分、表紙にある“真相究明 松本サリン事件”に惹かれて買ったんだと思います

因みに、このマルコポーロ2月号発行の後、3月に地下鉄サリン事件は起きています

 

表紙は稲森いずみ

 

目次にある“ナチ「ガス室」はソ連の捏造だった”という論文には驚きました

 

 

 

普通に、

「アンネの日記」を読んで(読まされて)育った私にしてみれば、

ホロコーストがなかったなんて話は、俄かには信じ難い暴論にしか思えません

 

世の中に「ホロコースト否認論」なんて存在すること自体、知りませんでしたし

 

 

 

 

さて、アマプラがお薦めしてくれた、

です

 

1942年1月20日正午、ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒに招かれ、高官15名と秘書1名による会議が開かれた。

議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。

「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード言語。

移送、強制収容と強制労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。

その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌が80年後のいま、明らかになる。

 

 

 

戦後発見された「ヴァンゼー会議議事録」、アイヒマンと秘書が記録した議事録に基いて製作された本作

会議中「最終的解決」という言葉がよく使われます

それがユダヤ人を「殺害し根絶やしにする」ことを意味しているのは出席者全員の共通認識のようです

 

会議中、それに難色を示した出席者の一人が「断種」でいいではないか、と言い出します

その理由は、第一次世界大戦ではドイツ軍兵士として戦ったユダヤ人を処刑したらドイツ人兵士が動揺するから

 

「アンネの日記」にも、一家が連行される際、父フランクが元ドイツ軍将校であった事実(家に軍服があった)に、やってきた軍?警察?が驚き、横柄な態度を改めた様子が書かれていた、もしかすると解説だったか?そんなシーンを読んだ覚えがあります

 

 

会議の出席者が人道的に配慮したのはドイツ人兵士のメンタル

元の仲間を殺す、ユダヤ人とはいえ女子供含めて皆殺しにする、そのショックは配慮しなければと言うと、若い将校が憤然として抗議します

「我が軍の兵士はそんなヤワでは無い」

 

 

「最終的解決」方法は会議の休憩時間に披露されます

アウシュヴィッツ収容所長のヘスが画期的な殺害システムを考案した、それならば人道的に効率的に「最終的解決」を実施出来る

 

この遣り取りは議事録に残っていないようですが、

取り敢えず、出席者全員納得して会議は終了しました

議長を務めたハイドリヒは満足して祝杯をあげます

 

 

 

この映画を観て、「ヴァンゼー会議」について調べたら、「ホロコースト否認論」にぶつかりました

あれ?「ホロコースト否認論」、なんか懐かしいぞ

どっかで見た覚えが、

ああ、「マルコポーロ」だ

 

 

「議事録」には「最終的解決」がホロコーストを意味する証拠はない、ユダヤ人の東方追放を話し合っただけ

「ヴァンゼー会議議事録」そのものの捏造の疑惑まで否認論者は言及しているそうです

 

成程、それで映画でも休憩中の話にしたのか

 

 

 

雑誌「マルコポーロ」に戻ります

私はその論文を読んで、こんな与太話みたいな話を載せるんだ、さすが右派系出版社の文藝春秋社、と変な感心をしたものですが、ユダヤ人社会はそんな緩い反応は見せませんでした

 

ユダヤ系人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)を始めユダヤ人の団体、イスラエルが抗議活動を始めます

 

特にSWCによる日本法人を含む各大企業に対する、文藝春秋社発行媒体への広告掲載取りやめ要請に、文藝春秋社はあっさり白旗を上げました

 

文藝春秋社長が論文を否定、「マルコポーロ」は廃刊、編集長の花田紀凱は閑職に飛ばされます


 

 

詳しくはこちらを

 

 

これには驚きました

 

一流出版社が兵糧攻めで、怪しい文章ではありますが、あっさり表現の自由を手放したこと

 

そして、ユダヤ人の世界の政財界への影響力の大きさに

 

 

売り上げ10万部だった雑誌「マルコポーロ」は一躍有名になりましたが、同時に消えました

花田編集長にしても、その論文の正当性なんて気にしていなかった、物珍しく売れるものならば何でも良かった

そんな話を読んだ覚えもあります

 

 

 

 

2007年、国連総会本会議で「ホロコースト否認論」は非難され、加盟国は「否認」活動を阻止する措置を取るよう勧告が決議されました

 

 

 

今現在、「ホロコースト否認論」がどれほど蔓延っているのか知りようがありませんが

 

ガザ侵攻に抗議すると反ユダヤ主義というレッテルを貼られ、(ユダヤ系だけではないと思いますが)寄付に頼る米国の大学で、学生、教職員の思想信条の自由、表現の自由が侵されている現実は決して対岸の火事ではなかった

 

そんなことを思わずにはいられません

 

 

歴史修正主義やヘイト、経済力、権力による言論封殺

 

時に何が正しいのか分からなくなる非力な個人はどうすれば

思考がとっ散らかった私です